方言 北海道弁 その他いろいろと №6

1869年(明治2年)、エゾ地が北海道と名前を変えて、道外各地から移民の群れがどっと押しよせるようになって150年以上経ちました。
日本全国からの移住者が入り込み、それぞれ出身地の言葉で話し、北海道開拓の当初は全国各地の方言が飛び交っていたようです。その混在するなかから一つの共通語が生まれていったそうです。

おイモは、ゴショイモ、バレイショ、などいくつかの言い方がありましたが、会話の中ではイモだけでもすみますので、淘汰されて北海道語として“バレイショ”は残りました。
私の好きな北海道弁の『アズマシイ』は、その状況を正確に表わす代わりの言葉がなく残りました。

アズマシイ』と『アズマシクナイ』ですが、
アズマシクナイという否定の形が先にあって、アズマシイの方があとからできました。
青森県からもたらされたアズマシクナイが北海道的単語として広まり、アズマシイはその後、北海道で誕生したということです。

東京の人が違和感を覚える『手袋をハク』。
全国共通語では、手袋はハメルもので、ズボンやスカートや靴下がハクものです。
「ハク」の語源は諸説あるようですが、言い方は東北からきたもので、手袋生産の多かった香川県では手袋のことを“手靴”“手にはく靴”と言っていて、その流れで「手袋をハク」となったようです。
私は、『手袋をハク』を今も言っています。

ナンボ』という言葉があります。
買い物に行って、「これナンボ?」と聞くのは一般的にありますが、
    「ごはんはナンボでもあるから遠慮しないで」(量的な程度)
    「ナンボ待ってもこない」(時間的な程度)
    「ナンボなんでもひどすぎる」(心理的なものの程度) など、
使用範囲を広げているのは北海道弁になります。
私も小樽にいた時は使っていました。
今は使っていないと思うのですが、、、。

北海道の女性のことばは乱暴だ、と言われることがあります。
文末につける『カイ』という言葉があります。これも北海道的な言葉になります。
「そうデスネ」→「そうネ」→「そうカイ

また、助詞を省略することが多いのも、投げやりで唐突で乱暴に聞こえることになっています。
    「傘、いるかい」 ← 傘はいりますか
    「靴、脱がないで」← 靴を脱がないで

ですので、私は話す時に丁寧に言うことを意識しているのですが、イメージしているのは、橋田寿賀子さんのドラマのセリフです。5W1Hではないですが、「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように」でまとめて丁寧に話をするということです。
相手にも伝わりやすいので意識するようにしています。

もうひとつ『~ダカラ』というのがあります。
感情を強く表わす言葉ですが、相手にも強く受け取られる効果があり、乱暴に聞こえることになっているようです。
    「おもしろいんダカラ」 ← おもしろいよ
    「買ってきたんダカラ」 ← 買ってきたのよ

『~マシタ』という丁寧語があります。
代表的なのは、「おはようございました」です。
「おはようございます」と現在形で言うのではなく、「おはようございました」と過去形で言います。
違和感があると思いますが、これは丁寧なあいさつの言い方なのです。
電話を受ける時に「はい、〇〇でした」とも言います。
スイマセンデシタ」もよく使ってしまいます。

私が30代、40代の頃、今から30年前、東京の方とお話する時は、北海道弁がうっかり口から出ないように意識していましたが、今の東京都心では、学生や若者たちが気にせず方言を使って堂々とおしゃべりしていることが多いそうで、「自分の方言への否定的な感情が弱まっている」とある記事に書かれていました。

また、その記事の中には、方言を研究する日本語学者の田中ゆかりさんの調査結果も書かれていて、
生まれ育った地域の方言については、
  「好き」 45%
  「嫌い」 8%
  「どちらでもない」 40%
  「分からない」 7%
調査結果の評価は、「若者を中心に出身地の方言を個性と捉え、地元を離れても場面に応じて共通語と使い分けるなど、戦略的に話す傾向が強まっている。表現のツールの一つになった」と書いてありました。

北海道弁について改めていろいろと調べてみると、今の私は思った以上に使っていることがわかりました。
コロナ禍で人と話す機会が減り、また、仕事をしなくなったこの一年でさらに緊張する会話が減り、北海道弁が駄々洩れ状態のようです。
使わないように気をつけようと思ったのですが、北海道弁を個性にして、堂々とおしゃべりすることも味わい深いような気がしてきました。
また、それが、かわいい年よりを演じる戦略になるのかな、とも思うのでした。

この文章をまとめるのに北海道新聞社が発行した「ほっかいどう語」という本を資料にしました。北海道大学など大学の先生方が調査結果を新聞に連載したのを本にしたものです。
古いものですが、とても勉強になりました。
ありがとうございました。

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