ごきげんよう
小樽絵本センターの講座で紹介されて読んだ絵本です。
気に入った絵本のひとつで、今も我が家の本棚にある一冊です。
内容は、一言で言うと、しろいうさぎとくろいうさぎがいて、結婚するというハッピーエンドのお話です。
しろいうさぎとくろいうさぎがいっしょに楽しく遊んでいるのですが、
しばらくすると、くろいうさぎはすわりこみました。
そして、とてもかなしそうなかおをしました。
「どうかしたの?」しろいうさぎがききました。
「うん、ぼく、ちょっとかんがえてたんだ。」
くろいうさぎはこたえました。
3回ほど繰り返されます。
さらにいっしょうけんめいかんがえて、そしてこころをこめていいました。
「これからさきいつもきみといっしょにいられますように!」
しろいうさぎとくろいうさぎは結婚しました。
というお話です。
これを読むと心が温かくなって涙が出てきます。
いいお話なんです。大好きな絵本です。
文と絵はガース・ウイリアムズさん、翻訳は松岡享子さんです。
松岡享子さんは、児童文学者の方です。
昨年の11月3日、その年(令和3年)の文化功労者に選ばれて、喜ばしいこと、と思っていたのですが、今年、1月25日、亡くなったことが記事になっていました。
86歳でした。
松岡享子さんは、この絵本の翻訳をした方ということで知っていましたので記事を見て驚きました。そして、懐かしくなり本棚より絵本を取り出しました。
松岡享子さんは、東京子ども図書館の設立時より40年以上に渡って理事長を務めていましたが、2015年に退任され、終身名誉理事長になっていました。
「しろいうさぎとくろいうさぎ」(1965年)の翻訳がデビュー作品です。
また、代表作が「くまのパディントン」(1967年)シリーズです。
「くまのパディントン」は、2014年イギリスとフランスの共同製作で実写版の映画になりました。2017年に続編も出ていますが、先日(2/23)テレビ東京で放映されていたので見ました。
松岡さんは、絵本も多数書いていて、知っているものは、「とこちゃんはどこ」「おふろだいすき」など。
最後に、小樽絵本センターの工藤先生の解説を記しておきます。
『しろいうさぎとくろいうさぎ』
この絵本は、おそらく四歳くらいが読書年齢の下限でしょう。下限ですから上限はございません。
この絵本は、純粋な愛のメッセージとも呼ばれています。絵のタッチはとてもソフトで、ほのぼのとする雰囲気の絵本です。しかし、その奥には、厳しい現実も隠されているのです。幼児であれば単純明快な解説で結構です。そこには、なんらの理屈はいりません。しかし、この作品は、アメリカで生まれました。アメリカは他民族国家ですので、様々な人種間の葛藤があります。とくに、白人と黒人の人種的対立は深いものでしょう。
この絵本は、白いうさぎと黒いうさぎの結婚を扱う愛の絵本です。
アメリカで、白人と黒人が結婚するということは、大変な葛藤があるのです。それを越えていこうとする強烈なメッセージが、この絵本には込められているのです。人種差別の問題は簡単ではありません。絵本の中で、いつも悲しい顔をするうさぎがいます。それは黒いうさぎです。きわめて象徴的ですね。様々な予断や偏見を越えていこうとする普遍的な心の力、それが愛なのでしょう。
絵本児童文学基礎講座Ⅰ「すてきな絵本にであえたら」の講演録より
私は、幼児と同じに単純明快に純粋な愛のメッセージとして読みました。
「しろいうさぎとくろいうさぎ」は、やっぱり好き、と思ったのでした。