映画「罪の声」を観ました—日本中を巻き込んだ驚愕の大事件。未解決の真相が明らかになる。「正義」とは何か?「罪」とは何か?

ごきげんよう

映画「罪の声」を観ました。
感動しました。引き込まれる映画で、終わった後に出てきた一言は、「面白かった」でした。
今のテレビドラマにあるようにテンポがすごく早いわけではありません。事件ものですが、ドラマです。淡々とドラマが進んでいくのですが、最後まで一瞬たりとも飽きさせずに見入ってしまいました。重たくて辛くなるラストではなく、ホっとした思いで見終われたこともよかったです。
「いい映画って、語りたくなる映画だよね」と言っていた人がいましたが、見終わった後にいろいろ思ったことがあり、誰かと話をしたいと思いました。でも、一人で見ていましたので映画好きな小樽にいる兄にLINEをしました。返事は、「見ていません」でした。
頭の中は興奮冷めやらずでしたので、公式サイトを覗いたり、感想の書き込みを見たり、そして、私の頭の中のことを文字にしました。

あらすじは、公式サイトから引用します。

35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件は、誘拐や身代金要求、そして毒物混入など数々の犯罪を繰り返す凶悪さと同時に、警察やマスコミまでも挑発し、世間の関心を引き続けた挙句に忽然と姿を消した謎の犯人グループによる、日本の犯罪史上類を見ない劇場型犯罪だった。

大日新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、既に時効となっているこの未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、取材を重ねる毎日を過ごしていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に古いカセットテープを見つける。
「俺の声だ―」
それは、あの未解決の大事件で犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと全く同じ声だった!
やがて運命に導かれるように2人は出会い、ある大きな決断へと向かう。
「正義」とは何か?「罪」とは何か?
事件の深淵に潜む真実を追う新聞記者の阿久津と、脅迫テープに声を利用され、知らないうちに事件に関わってしまった俊也を含む3人の子どもたち。
昭和・平成が幕を閉じ新時代が始まろうとしている今、35年の時を経て、それぞれの人生が激しく交錯し、衝撃の真相が明らかになる ――         <公式サイト>より引用

・キャスト
阿久津英士(小栗旬) 大日新聞大阪本社 文化部記者
           年末の未解決事件を扱う特集記事のために調査をする
           未解決事件とは「ギンガ萬堂事件」(1984年)
曽根俊也(星野源)  テーラー曽根を営む 二代目店主。
           父の遺品より自分の声が脅迫に利用されたことを知り調査を始める
水島洋介(松重豊)  大日新聞大阪本社 元社会部記者
鳥居雅夫(古舘寛治) 大日新聞大阪本社 社会部事件担当デスク
曽根達雄(宇崎竜童) 曽根俊也の父、光雄の兄で俊也の伯父
           父親の清太郎は、ギンガ萬堂に勤めていて、過激派左翼組織の
           内ゲバで誤って殺される。このことが、全ての始まりでした。
曽根真由美(梶芽衣子)俊也の母
曽根亜美(市川実日子)俊也の妻

・原作  塩田武士 「罪の声」
・未解決事件とは、「ギンガ萬堂事件」
・監督  土井裕泰
・脚本  野木亜紀子
・公開日 2020年10月30日

感想① 素人でもあんなに調査できるんだ:
曽根俊也(星野源)さんが、古いカセットテープから自分の声を見つけます。その自分の声は、あの未解決の大事件で犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと全く同じ声だと知ります。
なぜ? どういうことなのか? と、父の友人である堀田さんを訪ねます。そこから、次々と調査が進んでいき、事実が明らかになっていきます。
ドラマですから、感心するのはおかしいのですが、素人でもあんなに調査できるんだと、わたしも何かあったら調査できるかもしれないと、素直に思ったのでした。

感想② 事件に関与した子ども3人の運命:
映画では、事件の真相を明らかにしていくことと、もう一つ、当時、声を使われた子供のその後についても描かれています。曽根俊也(星野源)さんの他、2人の姉弟がいました。
この人たちは今どこでどうしているのか。
曽根俊也(星野源)さんとは対照的な人生で、2人の姉弟の内、姉の方はすでに亡くなっていました。弟の方は、隠れて生活する人生を歩んでいました。
弟役の生島総一郎(宇野祥平)さんの演技がまたいいんです。総一郎さんは、闇の中を生きてきたのですが、光を得ることができました。最後には、お母さんとも再開します。その展開もいいんです。

感想③ 背景に学生運動が関係していました:
犯人の一人である曽根達雄(宇崎竜童)さんは、曽根俊也の父、光雄さんの兄で、伯父になります。「あの事件の目的は金ではない。俺にとっては闘争でした」と言うところがあります。
曽根達雄(宇崎竜童)さんは、学生運動をやっていました。父 清太郎さん(曽根俊也さんの祖父)はギンガ萬堂の社員でしたが、その当時の過激派左翼組織の内ゲバで誤って殺されます。巻き込まれて亡くなっただけでしたが、会社は曽根一家に冷たくします。そのことを許せなく、ギンガ萬堂を恨んでいました。
また、事件を計画したことに「奮い立った。警察に、社会に見せつけてやった」というセリフもありました。
ロンドン在住中に親しくしていた彼女に記者の阿久津英士(小栗旬)さんが会いに行った時、彼女が言います。
「あの人は、もう、“fossil”よ。居場所は知っているわ。私は二度と会わないけど」
“fossil”とは、「化石」という意味です。
阿久津英士(小栗旬)さんが、曽根達雄(宇崎竜童)さんに言います。
「やっと分かりました。あなたは今も、1984年のままだ」と。
学生運動と「化石」。意味深な繋がりを感じました。

感想④ 母親役、妻役もよかったです:
俊也(星野源)さんの母親役、曽根真由美(梶芽衣子)さん。カセットテープに息子の声を録音したのはお母さんでした。その内容が明らかになる場面は、内容も演技も心に刺さりました。
曽根達雄(宇崎竜童)さんと同じ思いを持っていたからです。
俊也(星野源)さんの母親も学生運動をやっていました。俊也(星野源)さんが、なぜテープを録音したのかと聞くと、「奮い立った。警察に対する、社会に対する怒りに。」と言います。
俊也(星野源)さんの父は、理不尽な出来事で自殺していました。

妻役、曽根亜美(市川実日子)さん。俊也(星野源)さんが何かを調べていて、様子もおかしいのは分かるのですが、でも、何も聞きません。不安や心配はすごくあったと思うのに聞かないのです。どうして何も聞かずにいられるのだろうと思ったのですが、それは、もしかしたら信じているから。「信じているから」ということに尽きるのかなと思いました。
途中で俊也(星野源)さんのほうから話をする場面があるのですが、すでに手帳のことも知っていましたし、テープも聞いていました。
記者の阿久津英士(小栗旬)さんの取材調査に協力することになった時も、妻は「ずっともやもや悩み続けられても息がつまるし、迷惑。そやから、あなたの好きなようにせ」っと言います。阿久津英士(小栗旬)さんは、それを聞いて、きびしいですね、と言うのですが、俊也(星野源)さんは、やさしいんですよ、と言います。妻のような信じることと温かな愛を、私も持ちたいと思いました。

感想⑤ 素数が登場しました:
真相が明らかになった後、鳥居(古舘寛治)さんという特別企画班にいた方のセリフに素数が登場します。なるほど、素数はこういう意味でこういう使い方もできるんだと思いました。
「俺らの仕事は素因数分解と言ったところだなあ。なんぼしんどうても、目の前の不幸から目をそらさんと「なんでや」という思いで、素数になるまで割り切って、割り切って、真実を明らかにせんとあかん。」

感想⑥ 監督さん、脚本家さんがTVドラマを多く作っている方でした:
監督さんは、土井裕康さん。
脚本家さんは、野木亜紀子さん。
土井さんは、TVドラマ「愛してると言ってくれ」「ビューティフルライフ」「GOOD LUCK」
「空飛ぶ広報室」「コウノドリ」「カルテット」などの大ヒットドラマの演出をした方。
野木さんも、「空飛ぶ広報室」「逃げるが恥だが役に立つ」「アンナチュラル」「MIU 404」の脚本をした方。
みんな、私が大好きだったドラマばかりです。だから、この映画がすっと入ってきたのかなと思いました。この情報は、映画を観てから知ったのですが、とても腑に落ちました。

感想⑦ 主題歌がUruさんの「振り子」:
以前、「マツコの知らない世界」で森山直太朗さんが、「推奨する歌姫たち」を説明していたのですが、その中にUruさんもいました。内容は、悟り系、まっすぐ系、カリスマボス系などに分けて女性歌手たちを紹介していたのですが、Uruさんは、かめばかむほど系の中に入っていて、自分を見つめなおした時に聞くとよいとの紹介でした。なるほどと思いました。
エンドロールとともに流れてくる主題歌が、いろいろ思うことでいっぱいだった心に染み渡り、また、涙が流れてきました。

原作は読んでいません。映画を観ての感想です。
満足度の高い映画でした。
感動をありがとうございました。

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