本 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」をあらためて読みました

はじめに

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を何年かぶりで読み返しました。
2009年に出版された本ですが、2011年ビジネス書対象を受賞し、話題となった本です。

その頃私は、働いていた研究所の品質管理部で品質管理の仕事をしていました。
品質管理として基本ルールはありますし、社内ルールもありますし、研究室ルールもありますが、ルールがあってもいつもそのルールを守れる環境になっているかというとそうではないことも多くあり、品質管理の定着と品質維持・向上を考える日々でした。

文字として存在するルールをいかに定着させるか、年間目標を達成させるために何をどのようにしたらよいのかなど考える中で、この本のことを知り興味を持ち読みました。
それは、ちょうど、大賞を取って話題になっている頃です。

表題にある『マネジメント』という本は、企業経営について経営学者ドラッカーが書いたビジネス専門書です。
でも、今回紹介する「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本は、専門書ではなく、とても読みやすいもので、高校野球部の新人マネージャーと仲間たちが『マネジメント』を読んで甲子園を目指す青春小説です。
マンガ化、アニメ化、映画化もされ、映画での主人公は前田敦子さんでした。

そもそもの『マネジメント』という専門書は、企業を含めた「組織」の経営全般について書かれているもので、この本の中では、その「組織」を野球部に置き換えて説明しています。
さらに言うならば、家庭、学校、会社など、人が集まっているすべての「組織」で役立つ内容だと思います。

本の内容

公立高校野球部のマネージャーみなみさんは、ふとしたことでドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。始めは難しさにとまどうのですが、野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付きます。みなみさんと元マネージャーの親友の夕紀さん、そして野球部の仲間たちが、ドラッカーの教えをもとに力を合わせて甲子園を目指す青春物語です。

本について

本のタイトル
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

著者  岩崎夏海
出版社 ダイヤモンド社
出版年月 2009年2月

[主な登場人物]
川島みなみ  都立程久保高校野球部のマネージャー
宮田夕紀   みなみの幼なじみ。元野球部マネージャー(心臓病で入院中)
北条文乃   みなみの後輩。野球部マネージャー
柏木次郎   みなみの幼なじみ。野球部のキャッチャー
浅野慶一郎  野球部のエース
二階正義   野球部の補欠部員(『マネジメント』をすでに知っていた)
加地誠    野球部の監督

[目次]
第一章 みなみは『マネジメント』と出会った
第二章 みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ
第三章 みなみはマーケティングに取り組んだ
第四章 みなみは専門家の通訳になろうとした
第五章 みなみは人の強みを生かそうとした
第六章 みなみはイノベーションに取り組んだ
第七章 みなみは人事の問題に取り組んだ
第八章 みなみは真摯さとは何かを考えた

[文学賞情報]
2010年 第45回新風賞受賞
2011年 ビジネス書大賞2011受賞

[その他]
2011年4月~  NHK総合テレビ アニメスタート
2011年6月4日より映画がスタート (主演:前田敦子)

[ドラッカーについて]
ピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は、
1909年オーストリア・ウィーン生まれの経営学者・社会学者。95歳で死去。
「経営学の父」「マネジメントの権威」「ビジネス・コンサルタントの創始者」
と言われています。

専門書の『マネジメント』から学んだこと

その1   マネージャーの資質

能力は学ぶことができる。それだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。
真摯さである。
           (以下、青字部分は『マネジメント』からの引用)

始め、みなみさんは、真摯さとは具体的にどういうことなのかわかりませんでした。
保留にしたまま『マネジメント』の本の内容を読み進めます。
そして、最後に目標を達成して分かりました。
マネージャーに必要なのは、人の好き嫌いで評価するのではなく、誰が正しいかではなく、何が正しいか、その正しさを評価することだということでした。

わたし
わたし

真摯さがなければ『マネジメント』は成功しません

その2   組織の定義づけ

あらゆる組織において、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である。 わかりきった答えが正しいことはほとんどない。

友達の夕紀さんは、野球をするための組織ではないかと言うのですが、みなみさんは、それはわかりきった答えであって違うと言います。でも、何かまでわからず悩みます。

野球部員の中に正義くんという補欠部員がいます。
この正義くんは、企業家志望で『マネジメント』の本をすでに読んでいました。
その正義くんとこの本のことを話している時に、みなみさんは頭の中のもやもやが一気に晴れて、答えが姿を現します。それは、「感動」だと。
野球部の定義は、「顧客に感動を与えること」

わたし
わたし

定義を持たなければ成果は得られません

その3   われわれの事業は何か

企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。

みなみさんは、野球部にとっての「お客さん」というのが誰を指すのかわからず悩みます。「試合を見に来るお客さん」というのも、わかりきった答えであって正しくないと思いました。この答も正義くんと話をしていて分かりました。
顧客とは、関係するすべての人。
親、先生、学校そのもの、東京都、東京都民、高校野球連盟、高校野球ファンであると、そして野球部員も含まれるということ。
これらの顧客に感動を与えることが目的。

わたし
わたし

関係するすべての人を意識しなければ目的を達成できません

その4   企業の目的は、顧客の創造から

企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。
マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。

次の取り組みは、マーケティングでした。
部員が求める感動は一人ひとり違う。そこで、
入院中の夕紀さんに野球部員の一人ひとりと面談することをお願いしました。
夕紀さんは、話しやすい人柄で、お見舞いがてら病院まできてもらい、面談を実行することにしました。面談から、現実、欲求、価値を引き出してもらうのが目的です。
面談は成功します。
結果、部員たちは、大なり小なり知られざる一面というものを持っていることが分かりました

一人ひとりが考えていることや思っていることは、分からないものです。
思い込みで決めつけないで実際に聞くことが大切です。

わたし
わたし

上から下への一方通行ではなく、みんなの声を聞くことが大切です

その5   コミュニケーションが問題である

専門家にとってはコミュニケーションが問題である。
専門家のアウトプットが他の者のインプットにならないかぎり、成果はあがらない。
専門家は専門用語を使いがちである。専門用語なしでは話せない。
そのことを専門家に認識させること、専門家のアウトプットを相手の言葉に翻訳してやることがマネージャーの仕事である。

加地監督は、野球の知識に関しては素晴らしいものを持っていました。
質問するとものすごい情報量の答えが返ってきました。
そこには、野球の専門用語だけでなく、独特の難しい言葉遣いも加わり、みなみさんは理解できないことの方が多かったのです。
野球部員も同様で、加地監督のアウトプットは、野球部のインプットにならず成果につながっていませんでした。

そこで、みなみさんは、加地監督の通訳になることにしました。
部員たちの声を監督に伝え、監督の声を部員たちに届けます。

監督の知識と能力を、全体の成果に結びつけようとしました。
みなみさんは、これからが成長の時と思いました。
野球部はどんどん実力をつけていきました。

わたし
わたし

実となる学びが重要です

その6   人は最大の資産

人は最大の資産である。
人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである

次に行ったことは、部員の強みを生かすことでした。
パッティングが得意な部員、守備が得意な部員、足が速い部員など、
得意分野を生かしてポジションに着かせました
もうひとりのマネージャーの文乃さんも通訳者として活躍することになるのですが、そのことは彼女の強みを生かした結果でした。
そして、野球部が成長したのは言うまでもないことです。

わたし
わたし

人を育てるには強みを生かしましょう

その7   企業の第二の機能は、イノベーション

マーケティングだけでは企業としての成功はない。
企業の第二の機能は、イノベーションすなわち新しい満足を生み出すことである。
イノベーションとは、科学や技術そのものではなく価値である。
組織のなかではなく、組織の外にもたらす変化である。
イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。

練習試合でも徐々に成果が出るようになり、勝つことが多くなり、『マネジメント』として次のステップへ進もうとした時に出てきたのがイノベーションでした。
これまでの常識を捨て、新しい価値を打ち立てること。
これまでのやり方をガラリと変え、新しい何かを始めるということ。
みなみさんは文乃さんと監督に捨てるものは何かを相談します。
そして出てきた捨てるものが、「送りバント」と「ボール球を打たせる投球術」です。
「ノーバント・ノーボール作戦」を行いました。

わたし
わたし

ムダやムリを排除することも新たな一歩につながります

その8   成果こそ活動の目的

組織構造は、組織のなかの人間や組織単位の関心を、努力ではなく成果に向けさせなければならない。
成果こそ、すべての活動の目的である。

みなみさんは、練習したり、努力したり、過程も重要だけれども、結局は成果が得られないとだめなのだと言います。
練習も、努力も、成果に向けて、結果として、
野球の試合に勝たなければ成果を得られたとは言えないのだと。

わたし
わたし

成果がなければ自己満足だけで終わってしまう

最後に、感想

『マネジメント』について、高校野球部を舞台にして丁寧に解説していますが、それは『マネジメント』を成功させる、成果を得るためには、順を追って丁寧に進める必要があるということだと思いました。

これは、人が集まって目標を達成しようとする時の有効な手法であり、
考え方としては、自分の行動にも応用できるものでした。

私は、仕事で『マネジメント』を参考にしましたが、プライベートに於いても何かをしようとする時に、この『マネジメント』の手法を使うことがありました。
どこかに行く時、何かをする時など、いつもの日常と違うイベントの時は、直接の目的だけではなく、本の中にあったように感動すること、だったり、もうひとつ別の目的達成などを意識して、その目的を達成するために何をどうしたらよいのか考える時に、参考にしていました。

そうなのです、日常生活の中でも、応用のできるものなのです。

ひとつの本として、単なる青春物語と思うか、分かりやすい経営学の本と思うか、
どちらにしても実に面白い本でした。

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