ごきげんよう
映画「ファーストラヴ」を観ました。
タイトルからなんとなく描いていたイメージと全然違いました。
これは、サスペンス映画です。
見終わって、苦しい気持ちでいっぱいになりました。
映画の中にあったものは、性的虐待です。
それは、直接さわられなくても、無理やりじゃなくても、見られること、さらされること、性の対象として見られることだけでも、少女の心は傷つくというものです。
映画では、その傷は親に関係したものでした。
芳根京子さん役の聖山環菜さんの話と北川景子さん役の真壁由紀さんの話、
この二つが、「少女の心が傷つく」というところで繋がっている映画でした。
映画は殺人事件から始まります。
殺人の容疑で逮捕されるのが、聖山環菜さん(芳根京子さん)です。
環菜さんの話が強烈で、奥が深くて、考えさせられるものなので、気持ちが引き寄せられてしまいましたが、自分の思いを文字にするのは難しく、これはできないと思いました。
でも、真壁由紀さん(北川景子さん)が父親のことで閉じ込めていた心の闇に向き合うことになりますが、その時、彼女の夫とその弟がとても優しく接します。
弟の迦葉さん(中村倫也さん)が背中を押してくれて、夫の我聞さん(窪塚洋介さん)は、壊れないように包んでくれるのです。その寄り添いと包容力に感動しました。
そのことは、私の苦しくなっていた気持ちを和らげてくれました。
気持ちの整理が付けにくく、その気持ちを落ち着かせるために、二人の男性の優しさの方に気持ちが向いてしまったのかもしれませんが、優しさと包容力にキュンキュン、ギュンギュンしてしまった映画でした。
また、由紀さん(北川景子さん)が羨ましいとも思いました。
[以下、ネタバレが含まれます]
あらすじは、ネットより引用します。
ある大学のトイレで、一人の男性が胸を刺され倒れているのが発見されます。
その頃、血まみれのナイフを持ち川端の道を歩く一人の女性がいました。
アナウンサー志望の女子大生、聖山環菜(芳根京子)です。
彼女は、トイレで倒れていた父であり画家の那雄人(板尾創路)を殺した容疑で逮捕され、大きくメディアで報じられました。
環菜は、警察の取り調べに対し「動機はそちらで見つけてください」と返答したと言います。
彼女について取材の依頼を受けた公認心理師の真壁由紀(北川景子)は、彼女への接見を決意。
環菜の弁護士は、国選弁護人として選任された由紀の夫・我聞(窪塚洋介)の弟である弁護士・庵野迦葉(中村倫也)でした。
迦葉と由紀は大学の同級生で、過去に因縁を持つ間柄。
彼女は戸惑いながらも迦葉に接見希望を申し出て、ついに環菜と対面します。
「あの子はくせ者だよ。心が読めない」という迦葉の言葉に身構えながら、由紀は、最初は公認心理師の立場として冷静に環菜を観察します。
そして、環菜を取り巻くさまざまな人物から改めて知らされる事実に驚き、翻弄されます。
いつしかその真実は、由紀自身が抱える心の闇へと繋がっていきました。
<ネットより引用>
・キャスト
真壁由紀(北川景子) 臨床心理士。容疑者の取材をする。
真壁我聞(窪塚洋介) 由紀の夫。迦葉の兄(従弟関係)。写真家。
庵野迦葉(中村倫也) 弁護士で由紀とは大学の同期。国選弁護士として事件を担当。
聖山環菜(芳根京子) 女子大生。父親を刺殺したとして逮捕される。
・原作 小説「ファーストラヴ」 島本理生著 (第159回直木賞を受賞)
・監督 堤幸彦
・脚本 浅野妙子
・公開日 2021年2月11日
・感想① 夫役の窪塚洋介さんがよかった。
夫の我聞さん役が窪塚洋介さんです。
役柄としていい人過ぎる。優しすぎる。包容力がすごいです。
弟の迦葉さんのセリフに「兄貴ってさ、人の善意を疑わない。いっしょにいるとこっちが恥ずかしくなるよ」というのがあるのですが、そのくらいいい人で優しいのです。
我聞さんは報道写真家で、海外で撮影した写真で賞をもらった人でしたが、結婚して親の写真店を継ぎ、家にいることが多いので主夫になっていました。
由紀さんの心の中には何かあるんだろうなとずっと思っていたのですが、話したい時に話してくれればいいと思っていました。
由紀さんが心の闇を話してくれた時、その苦しさに寄り添ってくれる我聞さんの優しさ、包容力がたまりません。
また、迦葉さんとのことも、大学時代にお付き合いしていたことを由紀さんは黙っていたのですが、我聞さんは迦葉さんから聞いて知っていました。由紀さんが迦葉さんのことを話してくれた時、我聞さんは言うのです、「迦葉と過ごしたその時間も由紀の一部だ。それが今の由紀を作っている大切な一部なんだよ」と。
なんとすてきな言葉なのでしょう。
なんと優しく、暖かい言葉なのでしょう。
なんと大切に思う言葉なのでしょう。
窪塚洋介さんをしばらくぶりに映像の中で見たのですが、私の思っていたイメージと180度違ったので、そのギャップに興奮してしまいました。
役柄の我聞さんというより、窪塚さんがかっこよく、素敵に思えました。
私の知っている窪塚洋介さんは、若い頃の窪塚さんで、破天荒で、むちゃくちゃやっていて、訳の分からない、危険な人というイメージで、ぶっ飛んでいたという印象です。
今も記憶に残っているのは、自宅のマンションの9階のベランダから飛び降りて大けがをした事故です。
事故は2004年に起きました。
26mの高さからダイブし、9m離れたフェンスに激突し、芝生の上に落ちたのです。
本人にはその時の記憶はなく、ムササビのようにベランダから飛び出したのではないかと話題になりました。
真下に落ちていたら即死だったらしいのですが、フェンスに激突した後、芝生の上だったため一命を取りとめました。とはいっても、すごい大けがをしてしまいました。
15年ぶりくらいに窪塚洋介さんの演技を観たわけですが、役柄の我聞さんはすごく優しくていい人なのですが、自然な演技の中で窪塚洋介さん自身も同様に魅力ある人に思えて、興味を示したのは言うまでもありません。
・感想② 弟役の中村倫也さんもよかった。
弟役の迦葉さんが、中村倫也さんです。
我聞さんとは血が繋がっていない、いとこの関係になります。
小学生位の時に母親に捨てられ、母親のお姉さんの我聞さんの家族といっしょに過ごすことになり、兄弟のように育ちました。
由紀さんとは、大学生の時に、迦葉さんがナンパし、付き合い始めました。
迦葉さんは母親のことで、由紀さんは父親のことで心に傷を持っていましたので、二人は通ずるところもあったのですが、すぐ別れてしまいます。
その由紀さんが、兄と結婚したことに迦葉さんがどう思っているのか気になりました。
聖山環菜さんの取材をすることになって、頻繁に会うことになり、会話することも多くなります。その会話からは、由紀さんは気まずい感じで対応している様子がありましたが、迦葉さんは、大切に思っているような、見守っているような、そういう優しさを見せているように思えました。
分かれた彼女がお兄さんと結婚し、仕事を通してまた身近に存在することになり、二人の関係はどうなるのだろうと、ハラハラドキドキしながら観ていました。
迦葉さんは大学3年の時に、大学内に雰囲気のいい子がいたのでナンパしたと我聞さんに話をしています。それは由紀さんのことでした。
後になって、我聞さんが由紀さんのことについてどう思っているのか迦葉さんに聞いた時、こう答えています。
「大事だったけど、恋愛じゃなかった。それがどれだけ大切なことか伝えようとしても、きっともう受け入れないだろう」と。
由紀さんの心の闇のことを知っていて、心の闇を解放する手助けをしてくれるのは迦葉さんでした。
「由紀は自分の傷を兄貴に見せてないだろう。兄貴はいいやつで、やさしくて、何でも受け入れてくれる。でも、本当の由紀を知らないんだ、俺が知っている由紀を」
と言います。かっこいいです。とてもかっこいい。
映画の最後のところで迦葉さんが由紀さんに言います。
「あの兄貴が兄貴でよかったよ。やっと由紀とも家族になれた」、と。
・感想③ 由紀さんが羨ましいかった。
今回の取材にあたり、迦葉さんは由紀さんといっしょに仕事をすることになりました。由紀さんはきっと夫の我聞さんにはそのことを言えずにいるだろうと察して、迦葉さんから我聞さんに報告をしていました。
「兄貴には、俺から話をしておいた。がんばれってさ」
また、夫も由紀さんを気遣ってか、帰宅した時に我聞さんの方から声を掛けます。
「どうだった。会ってきたんだろう、迦葉に。あいつもあの事件担当するんだって。
迦葉は、ああ見えて、客観的で有能だから、いっしょに仕事すると頼りになると思うよ」
映画の始めのシーンですが、由紀さんを見守る二人の気持ちを感じました。
それと、彼らはお互いをリスペクトしてるんだなということも感じました。
事件の取材のために環菜さんとの面会を何度も行い、関係者への取材も進めていきます。
だんだん、自分の心の闇が表に出てきます。
由紀さんの心の闇は、お父さんの性的悪趣味で出張先のフィリッピンで少女を買っていたことです。
また、少女の写真も撮っていました。
由紀さんは、そのことを成人式の日に母から聞きますが、小学生の時からなんとなく父の視線に違和感を感じていて、「父の目が怖かった」と夢でうなされることもあり、思い出したくないこととして、記憶に蓋をしていました。
環菜さんはまだ隠していることがあると思い、
自分の心の闇を環菜さんに話をして、大人の男の人からされることをどう理解していいか分からず、人にも言えず、苦しんできたのではないかと言います。
そして、環菜さんがまだ口にしていなかった真実を言わせてしまいます。
由紀さんは、興奮して迦葉さんのところに行き、真実を言ってくれたことを話しますが、その時、由紀さんの心の闇の蓋は開かれていました。
迦葉さんは、由紀さんが事務所に到着する前に我聞さんに連絡します。
「由紀は、今、不安定になっている、ちゃんと話あえ、兄貴が支えてやれ」と。
ここからのシーンは、迦葉さんと我聞さんの優しさと包容力がMAXです。
・感想④ 環菜さんの事件についてのメッセージは、最初に登場する。
映画の最初で、由紀さんがインタビューを受けているシーンがあります。
臨床の現場にいて一番気になる点はどういう点ですか、との質問にこう答えています。
「ひきこもりになる原因の根底には、親と子の関係があるんですけれども、親御さんにそれを理解してもらうのが、時としてとても難しい。問題であるのは子供であって、自分には何の問題もない、一生懸命育ててきたのに何で、と思ってしまう」
環菜さんの事件に関わるメッセージの一つだと思いました。
もう一つ、映画の最初で、由紀さんが始めて環菜さんに面会に行った後、環菜さんからお手紙が届きます。
生意気な態度をとったことを詫びる内容で、
「私をちゃんと罪悪感のある人間にしてください」とも書いてありました。
私はこの部分も環菜さんに関わるメッセージなのだと思いました。
環菜さんは、由紀さんに心の内を話したことによって、受け止めてくれる大人がいることを知ります。裁判の後半では、事実を語り、自分の思いを話します。
そして言います、「父の目が怖かった。」(だから置き去りにした)
また、刑務所にいる環菜さんから手紙が届きます。
そこには、「私は父を置き去りにした。父からもう見られずにすむ。これで父の視線から解放される。あの時、ほんの一瞬確かにそう思ったのです」と書かれていました。
罪悪感のある人間になれたのだと思いました。
・感想⑤ タイトルに意味があるのだろうか
タイトルが「ファーストラブ」ではなく「ファーストラヴ」と「ヴ」を使ったことに意味があるのか気になりました。小説のタイトルがそうなっていますので、作者がつけたことになりますが、理由は分かりませんでした。
映画の中に登場する「初恋」は。
環菜さんは、家に帰りたくなかった時に、コンビニの定員さんだった若い男の人に優しくしてもらいます。時々、定員さんの家に行くようになります。その定員さんのことを初恋の人だと言いました。
この方は、裁判で証言台に立ちます。始めは証言台に立つことを断っていましたが、自分が少女を助けてあげられなかったことに罪の意識を感じたから承諾したと言います。
環菜さんにとっては、唯一、安らぎを感じることができる拠り所だったのだと思います。
・感想⑥ Uruさんの主題歌もいい。
Uruさんの歌は、映画によく使われますが、その優しい歌声は今回も素敵でした。
公式サイトにUruさんのコメントが出ていました。
「悲しいとか、苦しいとか、そういった感情を表に出す事の出来ない人物の心の内を曲にしました。そして、鎖した心が、出会った人によって、もう一度自分と向き合う事によって、次第に柔和されていく様も描いたつもりです」
最後に、
原作は読んでいません。映画を観ての感想です。
最近、親ガチャとか毒親とかいう言葉を耳にしますが、
家族、親について深く考えさせられる映画でした。
家族も親も、安心できる拠り所であってほしいです。
大切に思う優しさに救われました。
包容力の感動をありがとうございました。