ごきげんよう
映画「ブリッジ オブ スパイ」を観ました。
内容についてはなんの情報もなかったのですが、監督がスピルバーグでトム・ハンクス主演でしたので、どんな映画なのかなと思い観ました。
歴史、ドラマ、スパイが関係する映画でした。
歴史というは実話ということです。
準主役がソ連の老スパイで、諜報活動をしているのですが、FBIに捕まるところから始まります。
全体に暗い感じがあるのですが、弁護士役のトム・ハンクスとスパイ役のマーク・ライランスが味のある演技で、優しさ、温かみを感じる人間ドラマ映画でした。
また、アメリカらしい映画でもあり、トム・ハンクス役のジェームス・ドノブァン弁護士は、何度も難解な状況に遭遇するのですが、どうする、どうする、どうするのと、その対応に関心と感動がありました。
前半は、ソ連のスパイの弁護をする裁判の様子が描かれ、後半は、そのスパイと、ソ連に捕らえられたアメリカの空軍パイロットの交換の内容で、さらに東西ドイツのベルリンの壁がある日突然隔たれるその状況下で捕まってしまったアメリカ人留学生も交渉に加えることになるという展開です。
終わりまでハラハラ、ドキドキの連続でした。
あらすじは、ネットから引用します。
1957年米ソ冷戦下、画家を装ってブルックリンのアパートで諜報活動をしていたソ連のスパイ、ルドルフ・アベル(マーク・ライランス)が逮捕される。アベルの弁護を担当することになったジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)は、世間の批判の中で奮闘し死刑を回避する。
時を同じくし、CIAが極秘に遂行していた偵察機「U-2」がソ連領空内で撃墜され、米軍パイロットがスパイとして拘束される。若いパイロットを釈放するため、ドノヴァンは弁護を引き受けることになり東ベルリンへ渡る。
グリーニッケ橋でドノヴァンは、米ソスパイの身柄交換をさせる交渉人としてミッションに立ち向かう。
<ネットより引用>
1922年から1991年までは、ソビエト社会主義共和国連邦 [ソ連] でした。
現在のロシアはこの連邦の中にありました。
・キャスト
ジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス) 弁護士
ルドルフ・アベル(マーク・ライランス) ソ連のスパイ
メアリー・ドノヴァン(エイミー・ライアン) 弁護士の妻
フランシス・ゲイリー・パワーズ(オースティン・ストウェル) アメリカ空軍中尉
フレデリック・プライヤー(ウィル・ロジャース) アメリカ人留学生
・監督 スティーヴン・スピルバーグ
・製作 スティーヴン・スピルバーグ
マーク・プラット
イーサン・コーエン
・公開日 2016年1月8日
・感想① 気に入ったセリフがいくつかありました。その一つです。
ドノブァン弁護士とソ連のスパイのアベルと初めて顔を合わせます。
アベルは、アメリカに協力することを提案されていましたが断っていて、
裁判をすることを承諾します。
ドノヴァン「合衆国政府に協力する気はないのですね?」
アベル 「そうだ」
ドノヴァン「私を信頼し、話はすべて私に。私は、あなたを弁護するが、皆は電気椅子に送る気だ」
アベル 「OK」
ドノヴァン「不安を感じないのか?」
アベル 「不安が役に立つのか?」
このセリフの最後の2行の会話は、裁判の時にも出てきます。
また、アベルは「死ぬことは怖くはない」とも言っていました。スパイであるからこういうセリフが出るのか、アベルだからこのセリフなのか。
どちらなのかはわかりませんが、なんとなく、なるほどと思いました。
アベルの「役に立つか?」のセリフは、さらにもう一度後半にも登場します。
・感想② スパイですが死刑判決となりませんでした。
ソ連のスパイですから、本来であれば死刑となる裁判です。
判事に「頼むよ」とも言われます。判決は決まっているからということです。
でも、死刑になりません。どうして死刑にならなかったのか。
その過程がよかったです。
ドノヴァン弁護士は、弁護士として規範に則って弁護をしただけでした。
そうなのかもしれませんが、そこには、スパイのアベルを一人の人間として見ていたように思いました。
二人の会話、二人の目、二人がいる時の空気感、、、からそう感じました。
ドノヴァン弁護士は、判決の出る前に、判事の自宅に行って、「生かしておいた方がよい、保険になる」ということを言います。
判事は、有罪と評決しつつも、死刑ではなくこう言います。
「被告の身柄は米国司法長官に委ねられ、長官が指定する連邦刑務所に拘束、期間は30年とする。」
その後、周りはブーイングの嵐となります。
・感想③ ドノヴァン弁護士の弁護は規範に則ったものでした。
「すべての人間は、法律の下、平等な裁判を受ける権利がある」
ドノヴァン弁護士の弁護もこの精神の元に行われます。このことは、裁判もののドラマに登場するものですが、時にはそうならずに一方的に決めつけられて、その不条理に振り回される人間が描かれる裁判ものもあります。
この映画では法律の下、平等な裁判を受ける権利があると、スパイが死刑になりません。
スパイもすべての人間に入るのだということで、規範に則って弁護されます。
スピルバーグ監督が、ドノヴァン弁護士の不屈さに「道徳的で原則的信念がすばらしいと思ったからこの映画を作った」とコメントしています。
・感想④ 気に入ったセリフの二つ目です。
最後、橋の上で、ドノヴァン弁護士とアベルが交換の時を待ちます。
そして、ゲートが開き、橋の中央へ。
その時のセリフです。
ドノヴァン「帰国したら何を?」
アベル 「たぶん、ウォッカを飲む」
ドノヴァン「ルドルフ、可能性として、、、」
アベル 「同胞が私を射殺するか?」
ドノヴァン「そうだ」
アベル 「役に立つか」
ドノヴァン「・・・」
アベル 「今の質問に答えよう。私は、忠誠を守った。彼らも知っている。
だが、時に人は間違う。仕方ない。私の迎え方で分かる」
ドノヴァン「どうやって?」
アベル 「私を抱擁するか、後ろに座らせるだけか」
交換後、空軍パイロットは同僚に抱擁されます。
ドノヴァンはアベルのことをジーッと見ています。アベルは、後ろに座らせられます。
なんとも言えない表情をするドノヴァンです。
観ている私もエーッとなりました。
もやもやしたまま映画は終わりますが、最後にアベルのその後が文字で出てきます。
「アベルは、帰国後、妻と娘に再会。ソ連は、公的にはアベルをスパイと認めなかった」
ホッとしました。とてもよかったです。
橋の上でのアベルの表情がほんとに、ほんとにいいんです。泣けます。
・感想⑤ アベルから贈り物がありました。
スパイのアベルは、画家として生きていました。
最後、ドノヴァン弁護士にアベルからの贈り物が渡されます。
中を見てみると、ドノヴァンの肖像画でした。そっくりのすてきな絵でした。
意気なプレゼントです。
橋の上で別れる時の会話から、アベルはドノヴァンにとても感謝をしていたことがわかります。
その感謝のひとつは、一人の人間として扱ってくれたことだと思います。
アベル 「あなたへの贈り物を託した、ジム。絵なんだ。記念になればいいが」
(二人はジム、ルドルフと呼び合っていました)
ドノヴァン「すまない、私からは何も、、、」
アベル 「これが贈り物だ。あなたからの」
・感想⑥ ソ連のスパイとアメリカのパイロットの交換が、なぜベルリンで行われたのか。
なぜ、ドイツが関与するのか不思議でした。
交換の話は、ドイツからのおかしな手紙から始まっています。
ベルリンでは、偽家族も登場します。
具体的なことが明らかにならないまま話が進んでいくため、ドイツの動きがよく分からなかったのですが、ベルリンで対応してくれた人のセリフに出てきました。
「我々、東ドイツが望んでいるのは、主権国家と交渉したとアピールすること。米国と同等の独立国家として」
・感想⑦ 家族愛の場面が緊張をほぐしてくれました。
ドノヴァン弁護士が家族と関わる場面も何度かあります。
妻と女の子2人と男の子の5人家族です。
スパイを弁護したことで、家にものを投げ入れられたりもしますが、家族愛を感じる場面では、ほっこりした気持ちになれて、観る側の緊張をほぐしてくれてよかったです。
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2016年、アベル役のマーク・ライランスは、アカデミー賞に初ノミネートされ、助演男優賞を受賞しました。
トム・ハンクスの主演の映画ですが、スピルバーグ監督の映画だと思いました。
スピルバーグ監督の映画の中で、歴史・実話ドラマとしては「シンドラーのリスト」が好きですが、この作品も加わったことは言うまでもありません。
内容や展開が好きと思って気に入った映画でした。