映画「雨あがる」を観ました。
武士の三沢与兵衛役は寺尾聰さんで、妻のたよ役は宮崎美子さんなのですが、二人の夫婦関係が実にうまく描かれています。
寺尾さんは、武芸の達人ですが、人が好過ぎて仕官になれません。
顔の表情が、実に人が好過ぎる表情をしています。
そんな夫を冷ややかにまたあきれたように見つめる妻役の宮崎さんです。
でも、二人の関係は、ほのぼのといい関係なのです。
この映画では、男と女の違いがよく表現されていると思います。
女は現実的で、男は心で感じることが優先で行動するのです。
[以下、ネタバレが含まれます]
あらすじはネットより引用します。
あらすじ
武芸の達人でありながら、人の好さが災いして仕官がかなわない武士・三沢与兵衛(寺尾聰さん)とその妻・たよ(宮崎美子さん)。
旅の途中のふたりは、長い大雨で河を渡ることが出来ず、ある宿場町に足止めされていた。
ふたりが投宿する安宿には、同じように雨が上がるのを鬱々として待つ貧しい人々がいた。
そんな彼らの心を和ませようと、与兵衛は禁じられている賭試合で儲けた金で、酒や食べ物を彼らに振る舞う。
翌日、長かった雨もようやくあがり、気分転換に表へ出かけた与兵衛は若侍同士の果し合いに遭遇する。
危険を顧みず仲裁に入る与兵衛。
そんな彼の行いに感心した藩の城主・永井和泉守重明は、与兵衛に剣術指南番の話を持ちかけた。
ところが、頭の固い城の家老たちは猛反対。
ひとまず御前試合で判断を下すことになるが、そこで与兵衛は、自ら相手をすると申し出た重明を池に落とすという大失態をしてしまう。
それから数日後、与兵衛の元にやってきた家老は、賭試合を理由に彼の仕官の話を断った。
だが、たよは、夫が何のために賭試合をしたかも分からずに判断を下した彼らを木偶の坊と非難し、仕官の話を辞退するのだった。
そして、再び旅に出る与兵衛とたよ。ところがその後方には、ふたりを追って馬を駆る重明の姿があった、、、。
[キャスト・他]
・キャスト
三沢与兵衛(寺尾聰さん)
三沢たよ(宮崎美子さん)
城主 (三船史郎さん)
・監督 小泉堯史
・脚色 黒澤
・公開日 2000年1月22日
[その他の情報]
「雨あがる」は、当初、巨匠の黒澤明監督が脚本を執筆していましたが、常宿である京都の旅館で転倒し、骨折したことにより完成させることができませんでした。
黒澤監督の死後、黒澤監督の助監督だった小泉監督が、これまでに聞いていた構想や残されたメモなどをもとに完成させました。
小泉監督にとって初メガホンとなった今作は、2000年1月22日に全国で封切られ、第24回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞のほか最優秀主演男優賞、最優秀助演女優賞など8部門を制するなど圧倒的な評価を得ました。
<ネットより>
・感想① 武士・三沢与兵衛 と 妻・たよ について
(最初と最後に書いた内容と重複する部分があります)
武士の三沢与兵衛と妻のたよと二人の夫婦関係がうまく描かれています。
与兵衛は、武芸の達人ですが、人が好過ぎて仕官になれません。
たよは、いつもそんな夫を冷ややかにまたあきれたように見つめます。
でも、二人の関係は、ほのぼのといい関係なのです。
この映画では、男と女の違いがよく表現されていると思います。
女は現実的で、男は心で感じることが優先で行動します。
男性は、行動することに対して、周りの人ことを考えるとか、未来を想像してみるなどのリスク管理が薄いです。
女性は現実的です。いつも周りを意識して、未来を考えながらリスク管理ができる動物だと思います。
男性と女性が暮らすのは簡単です。でも、生きていくのは別です。
仕官の仕事がなかなか決まらず生活は大変です。
ですが、与兵衛とたみは、ほのぼのといい関係で、夫婦のお互いを想う優しさは温かいです。
夫としては、あきれてしまうこともあり、困ってしまうこともありますが、でも、それが二人の人生であり、喜怒哀楽の「喜」と「楽」を楽しみながら過ごしている様を感じます。
どんな状況であっても楽しく、また人生を前に進めるならそれでいいのでしょう。
・感想② 城主について
城主の役は、三船史郎さんなのですが、ネットのコメントでは演技が下手だと書かれています。作品の中で違和感を感じるとまで書かれています。
それに、なぜ、三浦史郎さんを使ったのかと。
そこまで言わなくてもいいと思いましたし、私は、違和感など感じませんでしたし、いい雰囲気を出していたと思いました。
別のコメントに、次のようなことが書かれていました。
「あの映画ではあの演技でいいのです
逆に言えば、あの映画でしか成立しない芝居だといってもいい。
実直で、豪胆で、家臣に慕われている、そういう殿様の人間性が、彼の芝居からにじみ出てる。あの設定でしか成立しないけど、それが監督の求めたものだからそれでいい。
だからこそ、最後は自分で早馬を飛ばして寺尾演じる浪人を追いかけていく、あのラストが生きてくる。彼ならそうするだろう、というのが、観客に今までの芝居で根付いているからです。」
このコメント通りだなと思いました。
ただ、映画では最後に城主が追いついたかどうか、再会できたかどうかまで描かれていません。
私は、人の好さが災いして仕官がかなわない武士の与兵衛ですが、この城主となら気があい、いい仕事をすることができるのではないかと思いました。
再会してほしいです。
城主役の三船史郎さんは、28年ぶりの出演とのことです。
三船敏郎さんの長男で、大学生の時に一時俳優として活躍しましたが、引退してイギリスに留学、実業家の道を進みます。
1981年三船プロダクションの仕事のために帰国。
現在は、代表取締役を務めています。
・感想③ 妻・たよのセリフがキーポイントだと思いました
城主が、与兵衛の見事な剣さばきを知り、剣術指南役にしようとするのですが、与兵衛はまた失敗をしてしまいます。
また、賭試合をしたことも明るみになり、指南役はだめになります。
家臣がそのことを伝えに与兵衛のところに来ます。
その家臣に向かって、たよが言います。
(賭試合をしたことについて)
「何をしたかではなく、何のためにしたか、大事なのはそのことです。でくの坊のあなた方にはわからないでしょうが」
与兵衛は賭試合がだめなことは知っています。
妻・たよにもやってはいけません、もうしないでくださいと言われています。
でも、やってしまうには与兵衛の優しい心根があるのです。
・感想④ 城主の奥様のセリフがキーポイントだと思いました
与兵衛の話を聞いた城主の奥様がいいます。
「あまりに優しすぎると、優しくされたほうは、自尊心を傷つけられるのかもしれませんね」
城主は与兵衛と試合をしましたが、与兵衛がつい本気を出して城主を川に落としてしまいます。
城主は負けたことは分かっているし、認めています。
でもそんな城主に慰めの言葉を、優しい言葉をかける与兵衛でした。
そうすると惨めになる、プライドが傷つけられて腹が立つのです。
でも、城主の奥様は、与兵衛はいい人なのだと、優しすぎる結果なのだと言うのです。
城主は、ついカッとしてしまったと反省し、与兵衛のところに行きますが、すでに二人は旅に出た後でした。それで城主自ら馬で追いかけます。それが最後のシーンです。
最後に
山本周五郎の作品の中で、この「雨あがる」は人気の短編のようです。
味わい深く、決して報られるとは限らず、でも情けの深さが滲み出る作品です。
男性は本当に心で感じることが優先で行動します。
私の身近なところにもそういう男性がいます。
行動することに対して、周りの人ことを考えるとか、未来を想像してみるなどのリスク管理が薄いのです。
女性は現実的です。いつも周りを意識して、未来を考えながらリスク管理ができる動物だと思います。
男性の行動を先に察知して、現実的なリスクの有無がわかる場合はいいのですが、いつもそうとは限りません。
だから、いろいろな出来事が発生して、人生の喜怒哀楽を生むことになります。
何かあった後、問題解決のために頑張るのは女性の方です。
男性と女性が暮らすのは簡単です。でも、生きていくのは別です。
生きていくのが上手くいくと、大変でも前に進むことができるのです。
映画の中の与兵衛とたみは、そんな関係で、ほのぼのといい関係です。
夫婦のお互いを想う優しさは温かいです。
夫としては、あきれてしまうこともあり、困ってしまうこともありますが、でも、それが二人の人生であり、喜怒哀楽の「喜」と「楽」を楽しみながら過ごしている様を感じます。
どんな状況であっても楽しく、また人生を前に進めるならそれでいいのです。
この映画では、男性と女性の違いがよく表現されていると思ったのでした。