映画「バーニング・オーシャン」を観ました—アメリカ映画。実話を描いた災害・パニック映画。掘削施設の作業員が起こした事故じゃないんだ。

ごきげんよう

映画「バーニング・オーシャン」を観ました。

2010年のメキシコ湾原油流出事故の当日を描いたもので、
原油掘削施設が大爆発し、大火災が発生し、施設から脱出するというディザスター(災害)・パニック映画です。そして、アメリカ映画らしさがいっぱいの映画でした。
パニック映画というと、内容が想像でき、ストーリーもワンパターンと思ってしまいます。この映画も王道をいくストーリー展開ですが、原油掘削施設というどういう施設なのか分からないところが舞台なのでそこに興味も持てましたし、爆発前の前半部分に綺麗な景色がいっぱい出てきて素敵でした。
大爆発や大火災の映像、大火災が発生した後の脱出劇は迫力満点で緊迫感がいっぱいで、飽きることなく、一気に観終わりました。

オリジナルストーリーなら物足りなさがあるかもしれませんが、内容は実話で映画の最初のところで、「事実に基づく物語」と表示がでます。
日本のタイトルは「バーニング・オーシャン」ですが、
原題は「Deepwater Horizon(ディープウォーター・ホライゾン)」で、
海上原油掘削施設の名前がタイトルです。
事故のことを知っている人たちは、あの大惨事の映画なのだという思いでこの映画を観ると思いますし、それを考えるととてもすばらしい映画だと思いました。
働いていた作業員は126人、そのうち11人が亡くなりました。
なぜ、あの大惨事は起きたのか、大爆発が起きた時はどういう状況だったのか、大火災の中からどのように脱出したのか。
そういうことを描いた記録映画となっている作品です。
エンディングで、実際に亡くなった方々の写真が写し出されます。

[以下、ネタバレが含まれます]

あらすじ
2010年4月、主任電気技師のマイク・ウィリアムズ(マーク・ウォールバーグ)は、メキシコ湾沖80キロの海上に浮かぶ原油掘削施設ディープウォーター・ホライゾンに向かいます。安全テストが終わっていないにも関わらず、石油会社(BP社)の幹部ヴィドリン(ジョン・マルコヴィッチ)はスケジュールの遅れを理由に掘削の強行を迫ります。突如警報音が鳴りだし、採掘口につながったバルブから濁った海水と原油が噴出、さらに海底油田から逆流してきた天然ガスが引火爆発し、作業員126名がいるディープウォーター・ホライゾンは炎に包まれます。会社に無断で助けを呼ぶな、自分達が先だと作業員を押しのけて逃亡する幹部たちを尻目に、作業員達は被害の拡大を食い止めようと奮闘しながら、決死の脱出劇を図ります・・・。<ネットより引用>

キャスト
マイク・ウィリアムズ(マーク・ウォールバーグ) 主任電気技師
ジミー・ハレル     (カート・ラッセル)   施設の主任
ドナルド・ヴィドリン   (ジョン・マルコヴィッチ) BP社の人
アンドレア・フレイタス (ジーナ・ロドリゲス)  マイクと間一髪で脱出する女性

・実話  2010年4月のメキシコ湾原油流出事故
・監督  ピーター・バーグ
・製作国 アメリカ(2016年)
・公開日(日本) 2017年4月21日

・2010年のメキシコ湾原油流出事故について
メキシコ湾原油流出事故は、2010年4月にメキシコ湾沖合80km、水深約1500mの海上で海底の油田を掘削作業中だったBP社の掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で起きました。この施設は、高さ50m、広さ20m四方と巨大で、15個のプロペラで位置を制御しながら海底を深く掘り、突き当たった原油の層から一気に噴き出そうとする原油を制御するものです。
事故は海底油田からこの施設に天然ガスが噴出、引火爆発し、大量の原油がメキシコ湾へ流出しました。
11人が死亡、施設は二日間燃え続け、原油は87日間、海に漏れ続けました。
原油流出量は推計600万バレルと言われ、
1991年の湾岸戦争の原油流出に次ぐ規模で、1989年に25万バレルが流出したアラスカ州のエクソンバルディーズ号原油流出事故をはるかに超えます。

・監督さんのコメントより --- なぜ映画にしたくなったのか。
この事故は大きな環境汚染を起こしました。
この事故について監督らが調査を始めたころは、流出事故を起こした原因は作業員にあるという記事が出ていました。しかし、亡くなった作業員の遺族に会って話を聞いたところ、そうではないことがわかりました。
掘削施設に残って原油の噴出を止めようとした作業員らだったのに、世間ではあたかも彼らが事故を起こしたかのように言われていました。
愛する人を失って悲しんでいるだけでなく、愛する人が悪人にされていることに監督は驚きと心の痛みと怒りを感じました。
監督は、みんなに真実を伝えたいと思いました。
それは、誰かが間違ったことをしたから事故が起きたことを追求するものではなく、事故から脱出しようとしたヒーローたちを描くものでした。

・感想① 映画前半に出てくる映像が素敵でした。
映画の前半は、主人公マイクが21日間の掘削施設での仕事に出る朝から始まります。
普通の平和な日常生活です。
しばらく会えないのでベットからすぐには出ず、その後キッチンで会話をしながら、起きて来た女の子ともお相手をします。
フーション港からヘリに乗って掘削施設に行くのですが、そこまで奥さんといっしょに車で向かいます。その時の映像がドライブでもしているかのように素敵な景色で、流れる音楽もやさしいものでした。
ヘリに乗って掘削施設までいく間の景色も青い空と穏やかな海も素敵でした。

途中、ヘリに鳥がぶつかりドキっとする場面がありました。
これから起きる大惨事を予感させる意味深な場面です。
仕事に向かっているいつもの時間に起きたびっくりした出来事です。

・感想② 娘(10歳)がパパのお仕事を説明する場面がよかった。
朝、娘が「パパの仕事」という作文を父親のマイクに読んで聞かせます。
簡単ですが、原油の掘削作業がここで紹介されます。
缶コーラとストローのような金属棒を使って実演しながら説明してくれます。
「へ~、そんなふうになっているんだ。分かりやすい」と思いましたし、モンスターが登場する内容も可愛らしいものでした。

説明が終わった後にコーラが噴き出して回りが凄いことになりますが、
これから起きる大惨事を予感させる最初の意味深な場面です。
親子3人の平和な時間に起きたびっくりする出来事です。

・感想③ パニック映画らしさは海の中にありました。
パニック映画に必ず出てくる、大惨事の前ぶれの映像は、海の中の映像でした。
始まってすぐ海の中のシーンがありますが、パニック映画が始まるぞ~とでも言っているようでした。
私は、海の中があまり好きではないので、真っ暗な海の中に真っすぐ海底まで続く太いパイプを映す映像はゾワゾワしました。
穏やかだった時間から地獄へと引っ張られていく感じ、泥水や原油が噴出する時の映像はゾワゾワ感がマックスでした。

・感想④ 大爆発、大火災 の映像は凄かったです。
これは、凄かったですとしか言いようがないのですが、
爆発の映像も火災の映像も迫力満点です。
炎の勢いと爆発の連続、音響も加わって見ごたえがありました。
私は、感動しました。
泥水が勢いよく噴き出すシーンでは、人間がそこまで飛ばされるんだと思ったり、そんな一撃があっても死なないんだ、とか、そういうことも思いました。
最初の爆発の時、主任のジミーさんの飛ばされ方は凄かったです。シャワーを浴びていたのですが、前の壁にぶつかり、後ろの壁にぶつかり、ガラスなのかカガミなのか破片もいっぱいのところに倒れ込み、全身傷だらけになりました。それでも、主任として設備運転室で指揮をとります。

・感想⑤ 主人公のマイクさんは、最後まであきらめないヒーローでした。
主任電気技師のマイクさんがよかったです。
マーク・ウォールバーグという俳優さんですが、只々、ヒーローでした。
家族思いで、施設内でも信頼があり、体形はがっしりしていますが、風貌がほんわかしていて優しさを感じるひとで、眼の表情がよかったです。
掘削施設からは、一番最後に施設運転室で仕事をしていたアンドレアという女性と脱出するのですが、危機一髪の状況で、火災の迫力に加えて、もうこの方法しかないと彼女を説得するシーンもなかなかよかったです。
脱出している時はがんばってと応援しながら観ていましたし、最後、助かって港に着いた後、放心状態になりながら歩きまわる姿にお疲れ様、よく頑張りましたと声をかけたくなりました。
ですが、彼はヒーローだったけど、一人の生身の人間でした。
助かって、船にたどりついた時は震えていたし、ホテルのような救護場所に着き、部屋に入った後、床に崩れ落ち動けなくなりました。
そこに奥さんと子供が駆けつけて抱き合った時は、やさしい一人のお父さんになっていました。
映画の最初の穏やかな空気感が戻り、音楽も同じものが流れていて、いい場面でした。

マーク・ウォールバーグという俳優さんは、
高校中退後は荒れた生活を送り、成人後もボストン警察に何度もお世話になっていました。
1994年に映画デビューしてからは、俳優業に専念しているようです。
この映画は彼にとっての7作目の実話映画で、ピーター・バーグ監督の実話映画に3本も出ています。
監督とは、プライベートでのお付き合いもあり、相性がよいみたいです。

・感想⑥ 実は、この監督さんの別の映画も好きです。
ピーター・バーグ監督は、実話を何本か映画にしています。
ノン・フィクションに影響され、その世界に入り込み、実際の関係者に会い、実話に惹かれていきます。
今回も石油業界と多くの時間を過ごしたそうです。
今後も実話映画を製作していくようですが、過去にはスーパーヒーロー映画も作っていました。
「ハンコック(2008年)」と「バトルシップ(2012年)」です。
監督のコメントによるとヒーローものはもう十分なのだそうです。

「バトルシップ」は、この映画より先に観ていて、好きな映画の一つです。
ハワイ沖で大規模な合同演習が行われる中、エイリアンの母船が突然出現し、そのエイリアンが侵略を始めるという話です。軽い気持ちで楽しく観られるアメリカらしいヒーロー映画です。

今回、「バーニング・オーシャン」の監督が製作した映画だと知り、驚いたとともに、ピーター・バーグ監督にとても興味を持ちました。

・最後に
私の映画の世界はまだまだ狭いのですが、監督から映画を観ることも楽しみになり、少し世界が広がったのではないかなと思ったのでした。

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