小樽 絵本センターの工藤先生が受賞されました

ごきげんよう

絵本センターの理事長であり基礎講座の講師である工藤佐千夫先生が、2021年12月1日、文化庁長官賞を受賞されました。おめでとうございます。

北海道新聞に載っていた記事です。

NPO法人絵本・児童文学研究センター(小樽)理事長の工藤佐千夫さん(70)が、長年にわたって児童文学の普及に携わり、国の芸術文化の振興に貢献したとして、本年度の文化庁長官表彰に選ばれた。工藤さんは15日に市役所を訪れ、迫俊哉市長に表彰を受けたことを報告した。

工藤さんは1989年に同センターを設立。92年から著名な作家や研究者などを講師に招いた文化セミナーを開催している。94年にはファンタジー分野で後世に読み継がれる日本の傑作を発掘しようと、臨床心理学者の故河合隼雄さん(元文化庁長官)らの協力を得て「ファンタジー大賞」を創設した。

現在の同センターの会員は全国に約1500人。会員などの大人向けに児童文学講座も行っている。工藤さんは「児童文化と生涯学習を合わせた路線は河合先生の考えでもある。活動が高く評価されたので、この路線をさらに推進したい」と意欲を示した。

同センターは市などと連携し、ブックスタート事業やこどもの詩(ポエム)コンクール開催なども手掛けており、工藤さんは「市長をはじめ、教育委員会や経済界のバックアップにも感謝している」と述べた。
<2021年12月16日 北海道新聞 より>

絵本センターについては、先日、紹介させていただきましたが、
基礎講座を受講される方は、子供に良い本を読ませたい、子供を本好きにしたいといった“子供のため”という理由で受講している方が多いようですが、受講しているうちにそれがいつしか“自分のため”に変わっていきます。子供のためと思っていた読み物のなかに、自分たちの考え方や生き方のヒントになる題材があるからです。

工藤先生は言います「絵本には対象年齢の下限はありますが、上限はないんです」と。
絵本センターの名誉会長の故河合隼雄さんもこう言っていました。「児童文学は子供の目で物事を見たときのことが書いてあるもので、大人にも子供にも意味深いものだ。大人たちは児童文学に触れることによって、自分が当然と思っている生き方について思いがけない真実を知り、深く考えさせられることだろう」と。

絵本センターは、生涯学習と児童文化との接点をひとつの大きなテーマとして、児童文化を自分のライフワークを考える一助にしてほしいという願いもあります。
工藤先生はあるインタビューで次のように言われていました。
「人には心の故郷が必要です。そして人の心の底には幾世代にもわたる文化の遺産がしまい込まれ、一人ひとりの深層に密やかに暮らしています。児童文化はこの遺産を発掘し、心の故郷を見つけるきっかけを与えてくれるものです。年齢、性別に関わりのない人びとの心の基層文化、それが児童文化なのです」

工藤先生のことで思い出すことがあります。
私が基礎講座を受講している時、その頃センターは小樽の長橋というところにあったのでバスに乗ってセンターまで行っていました。
ある時、センターに行き、ドアを開けると、教室には先生が一人だけがいらして、私の顔を見て、「えっ」という顔をされました。私も「あれっ」という顔して、先生をじっと見つめていました。先生の方が先に「今日は講座休みになったんだよ」と言われました。スケジュール表は事前に配布されていますので、何か理由があって変更になったのだと思うのですが、それがなんだったのかは記憶にないのですが、その日の講座はお休みになっていました。
講座はないわけですから、帰るしかないので挨拶して教室から出ました。
バス停は、来るときはセンターの前でバスが止まりますが、帰りはすぐそばの信号の向こう側になります。そのバス停でバスを待っていました。少しすると「〇〇さん」と大きな声が聞こえて、その声の方を向くと工藤先生が走ってこっちに向かってくるのです。どうしたのかしらと思いましたら、私のところまできて、「もう一人生徒さんが来たので、講座をやるから戻ってきて」と言われました。

驚きました。
休みだったのに生徒が来たから講座をしてくれるということ。
バス停まで走って追いかけてきてくれたこと。
工藤先生って温かいなあ、いい人だなって思ったことを思い出したのでした。

***小樽 絵本・児童文学研究センター
       https://www.ehon-ej.com/

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