続:谷川俊太郎さんは、どういう人なのでしょう。かってに調べてみました。

ごきげんよう

谷川俊太郎さんは、どういう人なのでしょう。
「詩人 谷川俊太郎さんを思い出しました。お会いしたのは小樽絵本センターの文化セミナーです」の続きとして、谷川俊太郎さんについて調べてみました。

ですが、谷川さんも現在は91歳です。
たくさんの作品も世に出しています。
年表を作成するとすごい巻物が出来てしまいそうです。
また、そんなエネルギーは持ち合わせておりませんので、私が出会った「小樽絵本センター」での活躍の内容と参考になりそうな書物の内容をまとめたいと思います。

始めに、「小樽絵本センター」での活躍ですが、
1992年から開催されている文化セミナーでは、講師やコーディネーターをされていました。
そのことについては、前回書きましたが、声が大きく、よく通る声で、ハキハキとしゃべり、リーダーシップをとるような方でしたので、コーディネーターの役はとても似合っていましたし、そういうことに向いている方であると思いました。

谷川さんが講師をされたのは、次の回になります。

第二回 テーマ「日本語と日本人の心」 1995年
第四回 テーマ「家族」 1999年
第六回 テーマ「児童文化の中の声と語り」 2001年
第十回 テーマ「読む 聞く」 2005年
第十三回 テーマ「みみをすます(河合隼雄の遺したもの)」 2008年
第二十一回 テーマ「みみをすます(人・詩・絵本)」 2016年

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私の本棚にあった谷川さんに関する書物は次のものです。

*「谷川俊太郎 詩と絵本の世界」 玄光社BOOK 発行
(2014年に発行されたA4サイズのもの)

この書物から谷川さんについてまとめてみたいと思います。

谷川俊太郎さんのプロフィール:
 1931年東京生まれ。詩人。
 1952年(21歳) 処女詩集「二十億光年の孤独」を刊行
 1962年(31歳) 「月火水木金土日の歌」で第四回日本レコード大賞作詞賞を受賞
 1975年 「マザー・グースのうた」で日本翻訳文化賞を受賞
 1982年 「日々の地図」で第34回読売文学賞を受賞
 1993年 「世間知ラズ」で第一回荻原朔太郎賞を受賞
 2010年 「トロムソコラージュ」で第一回鮎川信夫賞を受賞

受賞、著書 多数

1.<絵本づくりに関する33の質問について>

33の質問に谷川さんが答えていますが、その中で印象に残った回答をいくつか記します。

*(質問)子どもの頃に読んで最も印象に残っている絵本を挙げてください。
⇒講談社から出ていた自動車の絵本。

*(質問)詩を考える時と、絵本のための詩を考える時では、頭の使い方はどう変わりますか。
⇒詩を書くときは考えるというより勘を働かせることのほうが多い。
絵本のために詩の形でテキストを書く時は、絵先行かテキスト先行か
によって違いますから、一概には言えません。

*(質問)詩や絵本のアイデアを練る時によくやることは何ですか。
⇒詩と絵本では発想がまったく違いますが、先ず書き始めてみる
という点では、共通なところがあるかもしれません。

*(質問)詩や絵本は「注文制作」とおっしゃっていますが、制作の依頼を受けていない絵本のイメージが勝手に浮かんで来ることはありますか。
⇒ありません。

*(質問)絵本の依頼が来た時、引き受けるかどうかを判断する一番の材料は何ですか。
⇒一緒に仕事をするのが楽しそうなメンバーだったら引き受けます。

*(質問)絵が先と言葉が先、基本的にどちらがやりやすいですか。
⇒絵が先のほうがやりやすいかな、ゼロから考えずにすむから。

その他、「へっー」と思った回答は、
・執筆作業がはかどるのは、パソコンの前に座った時。
・執筆作業中、音楽を聴くことはない。
・詩作や絵本制作で最も時間をかけていることは、「推敲」。
その時は、生き生きした簡潔な日本語を目指す。
・資料を調べる必要がある絵本は引き受けない。
・絵本のテキストが書けなくて困ったことはあるが、それは自分の能力不足です。

一番驚いたことは、詩作や絵本制作が、「注文制作」だということでした。
詩人とは芸術家で創作家で、自分の世界にどっぷり入り込んでいるような人、とかってに思っていた私には、衝撃的なことでした。

2.<創作絵本について>

多くのイラストレーターや画家と組んで「絵本」を製作しています。
解説には、次のようなコメントが書かれていました。

内容はさまざまで谷川の引き出しは一体いくつあるのだろう
・静かに心に沁みるもの
・ドキリとさせられるもの
・シュールでブラックなユーモアなもの
・定型詩あり、自由詩あり
・詩の形をとらないもの  などなど。

[以下、内容は書物からの抜粋です]

作品の紹介

・「かないくん」 (2014年)
「死」をテーマにした異色の絵本。
谷川俊太郎が物語を一夜で綴り、松本大洋さんが二年かけて絵を描いた。
原稿執筆を依頼したのが2011年、絵本完成が2014年。
この絵本プロジェクトの言い出しっぺは糸井重里さんで、絵本の監修者となっている。
「かないくん」のタイトルは、谷川さんが子どもの頃に亡くなった同級生の名前からとっていて、絵本の中に登場する人物も「かないくん」であるが、内容そのものは実在したかないくんとは直接関係ない。

・和田誠さんとの絵本
最も多く一緒に作ってきた方で、谷川さんの詩・テキストと和田さんの絵、双方のユーモアが共鳴する。
和田誠さんは、イラストレーターであり、エッセイストで、書籍の装丁や雑誌のイラストレーションなどを手がける方で、「週刊文春」の表紙は有名です。

和田誠さんとの作品のいろいろ

「しりとり」 (1997年)
和田さんの線画をモノクロ印刷している。
言葉選びや言葉同士の結びつきが妙で、「ん」で終わっちゃっても平気という、ちょっと変わったしりとりの本。

「けんはへっちゃら」 (1965年)
ポケットの中のがらくたがちょっとずついいものに変わって行く。

「しのはきょろきょろ」(1969年)
好奇心旺盛な五歳の“しの”は、お母さんが美容院にいる間にデパートを探検。

「あな」 (1976年)
日曜日の朝、何もすることがないひろしは穴を掘り始めた。
深い深い穴。これは僕の穴だ。

「これは のみの ぴこ」 (1979年)
タイトルの言葉から始まって、1ページめくるたびに場面が変わって前の言葉に次の言葉がくっついて、最後はとても長い文章になる。

・長新太さんとの絵本

ナンセンスの巨匠同士がコンビを組んで生まれた絵本たち。
長新太さんは、漫画家であり、絵本作家。

長新太さんとの作品のいろいろ

「みみをすます」 (2004年)
1982年刊の同名の詩集の表現詩を一冊の絵本にしたもの。
詩・朗読=谷川俊太郎、絵・装丁=長新太、
英訳・英詩朗読=ウィリアム・I・エリオット、英訳=川村和夫
音楽=谷川賢作
絵は、力強い線画。
日本語と英訳の朗読CDが付属。
音楽は、谷川さんの長男。

*1982年刊の「みみをすます」は、絵が柳生弦一郎さんによるもの。
表題詩を含め、すべてひらがなで描かれた詩集。
ブックデザインも手がけた柳生さんによる顔のイラストレーションも印象的。

「あしながおじさん」(1967年)
作=ジーン・ウェブスター、訳=谷川俊太郎、絵=長新太
正体不明の人物の援助で大学に行けることになった孤児ジュディは、「足長おじさん」と名付けた謎の人物宛に楽しい学生生活を書いた手紙を送る。

[この本は、大好きなお話で、私の本棚にあります。]

・佐野洋子さんとの絵本
元夫婦だった佐野洋子さんとの共著は多い。
絵本よりも詩画集やエッセイなどがメイン。
佐野さんは、絵本作家であり、エッセイスト。

佐野洋子さんとの作品のいろいろ

「女に」 (1991年)
詩とエッチングが織りなす36篇の愛の物語。

[二人のサイン本を持っています。前回の書き込みに写真を掲載しました]

「はだか」 (1988年)
全編ひらがなで綴られた詩集。
一編の詩に1点ずつ、シンプルで骨太な線による佐野さんの絵が添えられている。

3.<翻訳絵本について>

解説には、次のようなコメントが書かれていました。

[以下、内容は書物からの抜粋です]

谷川俊太郎さんがこれまでに手がけた絵本の半数以上は、海外作品の翻訳である。
翻訳の際は、「素直に、難しい言葉にしない」ことを心がけると言い、訳すると意味がなくなるスラングや押韻は潔く捨てて日本語としてのリズムや面白さを大切にする一方、原詩が3行なら日本語詩も必ず3行にするなど、オリジナルの体裁を守ることにも配慮している。

・レオ・レオニさんとの絵本
大規模な原画展が行われるなど、日本で非常に高い人気を誇るイタリアの絵本作家。
その絵本の日本語版のほとんどの和訳を谷川さんが担当している。

レオ・レオニさんとの作品のいろいろ

「スイミー」 (1969年)
レオ・レオニさんの代表作。世界中で翻訳されロングセラーを続ける。
兄弟は、赤い魚なのに、一匹だけ黒いスイミー。ある日、大きなマグロに襲われて、兄弟はみんな吞み込まれてひとりぼっちになってしまう。赤い兄弟たちは、スタンプで押されている。

「じぶんだけの いろ」 (1975年)
自分だけの色がないことを悩んでいたカメレオン。
春になって、彼はすばらしい答えを見つけた。
見開きごとに色が変化するカメレオンが見どころ。

・ジョン・バーニンガムさんとの絵本
谷川さんがレオ・レオニと並んで多くの翻訳を手がけているのが、英国絵本界の巨匠ジョン・バーニンガム。

ジョン・バーニンガムさんとの作品のいろいろ

・「おじいちゃん」 (1985年)
おじいちゃんと孫娘のふれあいを柔らかな筆致で温かく描く。
女の子が成長するに従い、おじいちゃんはだんだん老いていく、、、。
別れの場面が淡々と描かれることで、かけがえのない時間のいとしさがより深く伝わる。

4.<作詞について>
知っている人は、知っていることですが、
「鉄腕アトム」の主題歌の作詞を担当しています。

空をこえて ラララ
星のかなた
ゆくぞ アトム
ジェットのかぎり

心やさしい ラララ
科学の子
十万馬力だ 鉄腕アトム

2番、3番もあります。
曲は、高井達雄さんです。

鉄腕アトムの歌は、その他に「ロボット・マーチ」「ロボット学校のうた」「ロボットハウスのうた」という曲もあります。
作詞をしたものは他にもあり、小室等さん、矢野顕子さん、谷川賢作さんなどが曲を担当しています。

<最後に>
絵本づくりに関する33の質問の回答を読んでいて、実際に小樽絵本センターの文化セミナーでお会いした谷川さんの不思議さに納得がいきました。
詩人のイメージをかってに内に籠った変人と思っていたのは、本当に失礼なことでした。

今回は、書物の内容からの抜粋が主な内容ですが、
調べてみるとまだまだ紹介すべきものがありました。
マザー・グースの翻訳も大きな仕事をされていますし、
有名な詩の「生きる」についてもふれていませんし、
写真エッセイや部分の博物誌というおもしろい作品もあります。
そもそも、「詩」そのものについて全然触れていませんし、そう思うと、谷川さんの偉大さ、凄さを感じないではいられません。

今回は、これくらいにしておきます。あしからず。

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