ごきげんよう
私は、テレビドラマが好きです。
月曜日は、午後9時からフジテレビの「イチケイのカラス」を観ていました。
先日、このドラマに“勇気”の言葉が出てきたことで書き込みをしましたが、また、“勇気”が登場しました。
「イチケイのカラス」
キャストは、入間みちお 刑事裁判官(竹野内豊さん)
坂間千鶴 刑事裁判官 (黒木華さん) などなど。
刑事裁判官を主人公にしたドラマで、タイトルのイチケイとは地方裁判所の第一刑事部の通称です。刑事裁判官が主人公となる民放ドラマは初めて、入間刑事裁判官は絶対に冤罪を生むことのないよう、時には自ら現場検証を行い、事件の真相を明らかにするという少し型破りな裁判官役となっています。
6月14日は最終回だったのですが、
今回の被告人は、自転車競技部に所属する人が、深夜の練習中に家族連れと衝突事故を起こします。この事故で7歳の子どもが意識不明の重体になります。被告人は、道路を右に曲がる祭、工事用のガードフェンスがあり、道路の左側が通れず、右側を走るしかなかったと主張したのですが、検察の調査では深夜に工事を行っていた記録がないとのこと。
なぜ記録がないのかと言うと、事故のあったところでは、実際工事が行われていたのですが、その工事現場では過重労働が発生していて、その違法が表に出ないようにと工事記録の隠ぺいがありました。
また、別に工事現場で崩落事故があり、現場監督の方が亡くなっていました。それも過重労働での過労によるミスが原因でした。
大きな力で真実を曲げられているのではと、その真実を明らかにする調査の中に“勇気”が登場します。
工事現場の事故で亡くなった監督さんには5歳の男の子(歩くん)がいます。
入間刑事裁判官がその子と話をします。
入間刑事裁判官「お父さんががんばっていたことで歩むくんだけが知っていることがあるかな」
歩くん「勇気をあげた」
(自分の胸に手をあて、思いを込めて相手の胸に注入する。ジャスティスヒーローの得意技)
入間刑事裁判官「どうしてお父さんに勇気をあげたの」
歩くんがお父さんとの交換日記を見せます。
入間刑事裁判官「歩くんにお願いがあるんだ。君もいっしょに闘ってくれないかな。
あったことをなかったことにしないためにも」
裁判の当日。歩くんが証人台に立ちます。(実際はイスが置かれてそこに座っていました)
入間刑事裁判官「お父さんのこと話してくれますか」
歩くん「お父さんはいっぱい働いていました」
入間刑事裁判官「いっぱいとはどれくらいですか」
歩くん「ぼくが起きる時間より早く家を出て、
ぼくが寝る時にはいつも家にいませんでした」
入間刑事裁判官「お父さんに勇気をあげた時のことを話してくれますか」
歩くん「夜、眠っている時、目が覚めました。
(お父さんがそばにいて)お父さんは泣いていて、勇気がないと言いました。
間違っていることを間違っていると言う勇気が。
こんな子が、自転車とぶつかって大けがしたんだ」
歩くん「お父さんのせいなの。お父さんに勇気をあげる。
(自分の胸に手を当てて、注入のポーズ)これで大丈夫。」
歩くん「それから、お父さんは言っていました。間違っていることをちゃんと言えたって」
入間刑事裁判官「お父さんは他に何か言っていましたか」
歩くん「きっといっぱい働かなくてもいい。
きっとみんな休むことが出来る。
きっとこれで遊ぶ時間ができる」
入間刑事裁判官がまた法壇から降りてきて、傍聴席に向かって話始めます。
裁判はだれのためにあるのか、裁判は常に平等であり、すべての人のためにあります。
司法は、絶対に真実を捻じ曲げない。だから、人は安心して生活が送れる。
今回、笹岡ようすけさんは、なぜ、自転車事故を起こしてしまったのか、本庄あきらさん(歩くんのお父さん)は、なぜ、命を落とさなければならなかったのか、裁かれるべき人間は誰か。
想像してください。
あったことをなかったことにされたら、どれだけの人が傷つくことになるか。
想像してください。
あったことをなかったことにして、どれだけの苦しみを抱えて生きていくことになるのか。
想像してください。
勇気を出して一歩踏み出した時に失わずにすむものを、何のために、だれのために働くのか。
少なくとも自分の人生にほこりをもって、生きていけるのではないでしょうか。
一歩踏み出す勇気、それは本庄歩くんからもらったはずです。
証言をしたいという人はいますか。
→ → → 傍聴席にいた工事作業員の人たちが次々と手をあげます。
その建設会社の人事部長の方も手を挙げ、「私が代表で証言します」と。
本庄さんが違法労働の改善を訴えた人であり、それを告発した人。
歩くんが可愛かった。しっかりした顔でしっかりとセリフを言います。すごいです。
自分が変わりたい時、誰かに力をあげたい時、勇気を注入しましょう。
勇気にはすごい力がありますから。
満足度の高いドラマでした。
コラムニスト(堀井憲一郎さん)の方が書いていたものを添付いたします。
竹野内豊が演じる型破りな裁判官が、毎回、手間をかけて心の通じた判決を下す。
そういう裁判ドラマである。
このドラマの見どころは、裁判官の入間みちお(竹野内豊)が「職権を発動します」と宣言して、みずから、事件の真相を見つけるために現場に調査に出向くところにある。
しかも、それまでの捜査では見つからなかった事実に気がつき、あたらな展開を見せる。
犯罪を犯した被告も納得のできる判決を言い渡す。そういうお話。
(略)
ドラマが伝えようとしているのは、裁判官の業務ではなく、それを超えた人としてやるべきことであり、それをわかりやすく示してくれていたとおもう。
そこにこのドラマの大きな価値があった。
疑問を感じたらあきらめない。
自分たちが正しいとおもえる判決をくだせるまで、最大の努力を払いつづける。
そうすることによって被告もまた納得してくれる可能性が高まる。
そういう「人生にとって大事なこと」を教えてくれるドラマだった。
それはまた飄々とした竹野内豊だからこそ、説得力があったとおもわれる。
とてもとても素敵なドラマだったとおもう
圧力に屈せずに正しいことを証言する弱者に寄り添う
イチケイというのは第一刑事部の略称で、つまり、刑事事件を扱っている。
(略)
彼らの勇気ある告発が、事態を動かすのを見ると、心洗われるおもいがする。
それがまた「本当はありえないことをリアルに見せる」ドラマの力であり、存在意義でもある。
型破りの裁判官がとても似合う竹野内豊の魅力。
弱者の勇気を惹起するのが、「型破りの裁判官」入間みちお(竹野内豊)の存在である。
(堀井憲一郎 | / コラムニスト)