TVドラマ「PICU」は広大な北海道が舞台の医療ドラマです

はじめに

TVドラマが好きな私は秋ドラマを毎日楽しく観ています。
秋ドラマは、10月~12月に放映されるドラマですが、月曜日午後9時からのフジテレビの「PICU 小児集中治療室」は北海道が舞台ということで、知っているところが写るかなと思いながら観ています。

舞台は、北海道札幌市の丘珠空港の近くにある病院で、丘珠病院という名前です。
北海道というと新千歳空港がメインですが、札幌市には丘珠空港という空港が実際にあります。
ドラマは、子供の命をテーマに「生きるとは」「命とは」「家族とは」という問いに真正面から向き合うメディカル・ヒューマンドラマです。

このドラマは、小児専門の集中治療室「PICU」をテーマにしたメディカル・ヒューマンドラマ。主人公の小児科医・志子田武四郎(吉沢亮さん)が先輩医師・植野元(安田顕さん)と共に、どんな子どもでも受け入れられる「PICU」を作るため、そして1秒でも早く搬送できる医療用ジェット機の運用を実現するために奔走する姿を描く。
北海道の広大な大地では、陸路での搬送には時間がかかり、険しい山を越えるには、ドクターヘリでは高度が持たない、医療用ジェットの運用が必要でした。

キャスト・その他:

志子田武四郎(吉沢亮)   小児科医。新設されたPICUへ異動となる。
植野元   (安田顕)   北海道の丘珠病院にPICUを新設するため、
              東京からやってきた小児科医。
              志子田先生をしこちゃん先生と呼び、指導します。
志子田南 (大竹しのぶ)  武四郎の母。女手ひとつで武四郎を育てた母。
              バスガイドをしている。
矢野悠太 (高杉真宙)   武四郎の幼なじみ。大親友で救命医となる。
河本舞  (菅野莉央)   武四郎の幼なじみ。武四郎と同じ病院に勤務する医師。
涌井桃子 (生田絵梨花)  武四郎の幼なじみで、ずっと思いを寄せていたが
              別の人と結婚してしまう。
              武四郎の母と同じ会社でバスガイドをしている。
綿貫りさ (木村文乃)   PICUに配属されてくる救命医。
羽生仁子 (高梨臨)    植野医師にヘッドハントされ家族で北海道へ移住してきた
              優秀な看護師。

脚本 : 倉光泰子
演出 : 平野眞
プロデューサー : 金城綾香    担当したドラマは、『グッド・ドクター』『監察医 朝顔』
                  『SUPER RICH』『元彼の遺言状』
主題歌:「俱(とも)に」中島みゆき

第一話について

第一話、スタートは主人公の志子田武四郎さんとそのお友達と4人が湖でカヌー遊びをしているところから始まります。場所は、南富良野です。
そして、近くでテレビドラマを撮影していたのですが、それは美瑛町です。
どちらの場所も北海道を象徴する風景です。始めから、北海道の広大な自然を強調します。
まったり、ゆったりと流れる音楽と空気感。
丘珠病院がある場所も、丘珠空港が近いこともあり、病院の周りにはあまり建物が建っていませんので、ここでも北海道の広大さが強調されます。

最近のドラマはテンポが速いものが多いからか、あまりにものんびりすぎて、北海道のイメージはこれでいいのかしらと思ったほどです。
そして、主人公は、若手医師の志子田武四郎さん(吉沢亮さん)で、
PICU立ち上げの責任者は、植野元先生(安田顕さん)です。
植野先生は、物腰柔らかく、やさしい雰囲気100%の先生なのですが、その人柄を受け入れるまでに少し時間がかかりました。

安田さんと言えば、直近のTVドラマでも変人な役をやっていましたし、私のイメージは、コメディー、面白い、変な人、でしたから、180度違うやさしく紳士的に振る舞う医師役にとても違和感がありました。

第一話から子供が亡くなるシーンが2度もあり、少し、衝撃的でした。
医療ドラマは、助ける内容が多いと思いますし、ましてや患者は子供ですから、助けられなかったことから始まったことに生々しさを感じました。

このことについては、ネットでも話題になっていて、痛ましい、つらい、しんどいの反応がありましたが、金城プロデューサーは、医師たちが現実をどう受け止めて頑張っていくのかを見せたいという思いがあったとのことです。

このドラマは、患者を救い続ける医療ドラマではなく、どんなこどもでも受け入れられるPICUを作ることを描いたドラマなのです。

カヌー遊びをしていたのは、3年前のことで、彼らがまだ医師になる前でした。
この時、テレビロケをしていた子役が亡くなります。PICU設立前です。
そして、設立されたばかりのPICUに稚内市から運ばれてきた5歳の少女は、発症から4時間経過していて処置が間に合わず亡くなりました。医療用ジェット機の運用はまだでした。

第二話について

第二話は、病院に火傷を負った急患2人が救急搬送されてきます。

9歳の姉と6歳の弟です。姉の莉子ちゃんは軽傷のように見えましたが、実は気道熱傷を負っていました。合唱をやっていた莉子ちゃんでしたが、声がでるようになっても歌うことはもうできない状況でした。

植野先生と志子田先生は、母親からそのことを娘に言わないでほしいと言われ同意しました。
ですが、志子田先生は、莉子ちゃんに本当のことを教えてほしいと頼まれ、教えてしまいます。
その後、莉子ちゃんは、「歌えないなんて死にたい」とメモをし、自分の気管につけられたチューブを抜いてしまいます。
先生方がすぐ駆けつけて大事にいたりませんでしたが、植野先生は、志子田先生を叱ります。

植野先生「もし、余命先刻だったら伝えましたか?命のことなら言えないのに、声のことは言えるのはどうしてですか?よく肝に銘じておいてください。ここはチーム医療です。そのチームには親御さんも入っているんです。志子田くん、帰ってください」静かに怒りをあらわにしました。

志子田先生は、第一話では、経験不足から急患に対しておろおろしていました。
第二話では、親御さんとの約束を守れず、言ってはいけないこと言ってしまいます。
でも、一歩ずつ頼もしくなっていきます。
このドラマは、志子田先生の成長ドラマでもあります。

第二話の最後、志子田先生が飛行機を見ながら思いにふけっています。
広いところなのですが、丘珠空港近くの丘珠空港緑地らしいです。
ここでも、北海道の広大さが強調されていました。

第六話について

第六話では、心臓移植が必要な心臓病の男の子(圭吾くん)が意識のない状態で運ばれてきます。
函館の子供で、同級生に彼女(優里ちゃん)がいます。
優里ちゃんは東京へ修学旅行に行きましたが、圭吾くんは行けませんでした。

志子田先生が計画して、バスを貸し切り、お友達にバスガイドをしてもらい、札幌市内の名所を東京に見立てて巡ります。(本当は、お母さんにバスガイドをお願いしていたのですが、体調が悪いからとお友達が対応します)

ここで登場したのは、
東京ドームの代わりに札幌ドーム、
上野動物園の代わりに円山動物園、
東京タワーの代わりに札幌テレビ塔、です。

私は、懐かしいなあと思いながら見ていました。

ドラマを制作したきっかけ

このドラマを作ることになったきっかけは、
金城プロデューサーが担当していた『グット・ドクター』(2018年)で医療監修をしていた杏林大学医学部の浮山越史教授からの提案でした。

金城Pが、『グッド・ドクター』は韓国ドラマのリメイク作品だったので、次はオリジナルで小児医療をテーマにした作品を作りたいと思っていたところに、浮山先生から「PICUをドラマにしてはどうか」と話があったそうです。

今回のモデルとなった埼玉県立小児医療センター小児救命救急センター長の植田育也医師にも会い、話を聞き、日本の小児医療の現実、環境の厳しさを知り、ドラマにすることが決まりました。

その植田医師は、このドラマでPICU担当の医療監修として参加しています。

ドラマの植野元先生につて

米国でPICU医の資格を取得。
日本各地でPICUの整備を進めてきた小児集中治療のパイオニア。
穏やかな口調で物腰は柔らかく、常に子供の目線を忘れない人。
日本一広大な自然を相手に、医療用ジェット機を運用した日本屈指のPICUを作るという最後の大仕事を成し遂げるために、東京からはるばる北海道へやってきた方です。

この内容は、モデルとなった植田医師の情報でもあります。

陸路での搬送に時間がかかる北海道で、医療用ジェット機で雄々しい山を越えて1秒でも早く搬送すること。そして、どんな状況のどんな子どもであっても全員を受け入れられるPICUを作ること。
そんな壮大な目標を掲げる植野先生でしたが、現状のPICUは圧倒的に人材不足で急患を受け入れられる状況ではありませんでした。
そんな状況から、第一話が始まりました。

植野先生役の安田顕さん

安田顕さんは、レギュラーキャストとして月9出演は、今作が初めてとのこと。
そして、安田さんの故郷でもある北海道が舞台です。
インタビューでは、「どこにいても、夕暮れを見るたび、故郷の夕暮れをふと思い出します。」と話していました。

今回の役は、物腰柔らかい医師役です。
安田さんは、モデルとなっている植田育也医師に会い、役作りとして次のように話しています。
「僕が植田先生に抱いた感覚ですが、ミスが許されない状況で、とにかく冷静でいることを心がけている方だと感じました。相手を論破するのではなく、対話を大事にする方。そのことから感情的に物事を言うのではなく、優しさの中に厳しさを持った人というのを表現しています」

金城Pと平野監督と話をした時に「優しさの中に厳しさを持っている人を表現してほしい」と言われたそうです。
安田さんは、確かに感情的にものを言う人ではないと思い、話し方や態度で演じようと思ったそうです.

安田ファンからは、こんな姿を見たかったとの声が上がっています。
私もいつも見ていたコメディアン的な安田さんとはちがう、素敵な紳士的な安田さんを楽しみたいと思いました。

よかったセリフ

第一話から:

運び込まれた5歳の少女は、助けられず命を落とします。
その後にミーティングが行われました。

志子田先生「さっき、女の子が亡くなったんですよ。なんで何もなかったように、淡々と話せるのですか?、、、、おかしくないですか、人が一人、死んじゃったんですよ、、、」
涙ながらに訴える。

植野先生「亡くなったから、話すんです。人間が一人死んでしまったから、まだみんなの記憶が新しいうちに、正しい情報が集められる今のうちに考えるんです。君の記憶が新しいうちに。経験を自分たちの血にするために話すんです、分析するんです。どうしたらよかったのか、反省して、反省して、考えて、考えて、一緒に考えましょう。」

第八話から:

心臓病の圭吾くんは、治療としてできることはすべて行いましたが、状態は悪い方向に進んでいました。
感染症が起きているのは事実なのですが、いろいろな検査をするも原因が特定できません。
不整脈が頻繁に出て、感染症もある。
ミーティグの場で、他の先生より両親にいろいろなケースを話す必要があると言われます。

志子田先生は、「親御さんには、終末期の過ごし方も含めてお話しようと思います」と言います。
これは、諦めるということではなく必要なこととしての対応でした。

ミーティングの後、羽生看護師より「圭吾くんは、小学6年生です。大人の雰囲気をすぐ察します。お話する時は、気をつけてくださいね」と言われます。

両親への説明:
現状を説明した後、
志子田先生「私たち医者に出来ることはないのかもしれません。」
   (はっきりした目つきでしっかり話をする志子田先生)
志子田先生「いっしょに考えたいんです。圭吾くんにとって、何が最適なのか」
母親は少し考えて、
母「帰りたいです。函館に返してやりたいです。家の近くで、できるなら
  家で最後をさせてあげたいです。」
志子田先生「わかりました」

函館に帰ることを知った圭吾くんは志子田先生に聞きます:
圭吾くん「俺、死ぬんでしょ。」
志子田先生「えっ」
圭吾くん「だから、函館に帰るんでしょ。」
志子田先生「違うよ。」
圭吾くん「本当のこと教えて。先生、ちゃんと教えて。」
志子田先生「圭吾くん、圭吾くんは今、感染症の治療をしていることはわかるよね。
    だから身体もすごく今はだるいと思う。でもね、その治療が終われば、
    補助人工心臓が出来て、移植に向けて進められるんだ。
    その治療は難しくないから、おうちの近くの病院で大丈夫なの」
圭吾くん「ほんと。死んじゃうのかなって思って、怖かったから。違ってよかった。」
志子田先生「先生、圭吾くんに嘘ついたことある?心配しすぎだって。」

両親への説明、圭吾くんへの対応を聞いていた植野先生が志子田先生に言います:
植野先生「しこちゃん先生、正しかったです。君は。
    圭吾くんが何度も心停止を乗り越えられたのは、なぜだと思いますか?
    しこちゃん先生が生きたいという希望を諦めさせなかったからですよ。
    圭吾くんのお母さんが、どうして決心がついたと思いますか?
    やれることはすべてやったからです。
    ちゃんと諦めがつけば、看取る覚悟ができるのだと思う。
    圭吾くんの一番よい方法で最後を迎えられるように。
    そう思えるようになるんだと思うよ。」
志子田先生「はい」
植野先生「頼もしくなったね」

最後に

丘珠病院は、川崎市立多摩病院で、病院内の撮影は、都立小児総合医療センターですので、ロケは関東圏内で行われることが多いようです。
北海道ロケは、第一話の南富良野と美瑛町、札幌市内は丘珠空港周辺と大通り公園、修学旅行を行った時に見た観光地でした。

北海道が舞台ということで見ていたドラマですが、関わったことがない小児医療の現場を見させていただき、考えることの多いドラマでした。

ドラマの中で何度か聞いた言葉が、
「治療としてもうすることがありません。後は神の領域。奇跡だけです。」

子供の治療の難しさと厳しさと繊細さを知りました。医療現場の命の話なども患者である子供を思うことが第一、次に親御さんの納得と覚悟に寄り添うことも必要で、そういう小児医療の現場で奮闘している先生とその他の医療従事者の方々に感謝しかありません。

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