TVドラマ「テミスの不確かな法廷」。人が人を裁くとは何か。“普通”とは何か。

TVドラマが大好きな私。
1月~3月の冬ドラマに気になるものがありました。
火曜日、NHKテレビ 10時から「テミスの不確かな法廷」というドラマです。
それは、法廷ヒューマンドラマです。
法廷という枠を超え、人が人を裁くとは何かを見つめ直す人間ドラマです。
やっぱり裁判関連のドラマは、面白い、大好き、と思いました。

主演は松山ケンイチさん。
脚本は、「イチケイのカラス」シリーズ、「ブルーモーメント」「絶対零度」シリーズなどの浜田秀哉さん。
(これらのどれもが好きなドラマでした)
チーフ演出は、吉川久岳さん。
主演の松山ケンイチさんの役柄は、前橋地裁第一支部に異動してきた特例判事補役です。

感想ついて書く前に、ドラマの説明をします。

ドラマの内容は
発達障害を抱えた裁判官が、自らの特性と格闘しながら難解な事件に挑む法廷ヒューマンドラマです。

主人公の安堂清春さん(松山ケンイチさん)は、幼少期にASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受け、主治医の助言をもとに、“普通”であろうとコミュニケーションやふるまい方を学びました。
そんな彼は、法律だけは個人の特性に関わらず変わらないルールであると知り、法律を学ぶことになりました。

ドラマでは、いくつかの裁判を取り上げていますが、複雑な人間模様が絡み合う、難解な事件ばかりです。市長を襲った青年。親友を昏睡状態に追い込んだ高校生。そして、父は法律に殺されたと訴える娘、、、。
安堂さんの特性からくる“こだわり”が、誰も気づかなかった事件の矛盾をあぶり出します。

また、それらとは別に安堂さん(松山ケンイチさん)のお父さんが関係する25年前の「前橋一家殺人事件」がとりあげられます。
お父さんは、最高検察庁次長検事の結城さん(小木茂光さん)と言いますが、当時、この事件に関わり、その後、冤罪が確実となったその核心を知っていました。
〔最高検察庁次長検事は、最高検察庁のナンバー3の地位〕

キャストは、
安堂清春さん(松山ケンイチさん) 前橋地裁第一支部に異動してきた特例判事補
小野崎乃亜さん(鳴海唯さん) 東京の大手法律事務所を辞めて前橋にやってきた弁護士
門倉茂さん(遠藤憲一さん) 前橋地方裁判所第一支部の部長判事であり、安堂さんの上司。
山路薫子さん(和久井映見さん)精神科医。安堂さんの発達障害を診断した医師。
津村綾乃さん(市川実日子さん) 前橋地方裁判所第一支部の執行官。
落合知佳さん(恒松祐里さん) 判事補
古川真司さん(山崎樹範さん) 検察官
八雲恭子さん(山田真歩さん) 前橋地方裁判所第一支部の主任書記官。
萩原朝陽さん(葉山奨之さん) 前橋地方裁判所第一支部の書記官。

感想 ①気になったセリフについて
安堂さんのセリフです。

「わからないことをわかっていないと、わからないことはわかりません」

わからないからということで、そのことをそのままにしてしまうと、それで終わってしまう。でも、わからないことには、意味があったり、重要な鍵が隠されていたり、問題解決につながったりする場合もあります。
わかったふりをしたり、そのままにしてしまったり、そうすることはいけないことなのだという意味だと思いました。
そもそも、その前にわからないことが何なのかということですが、“なぜ?”“何?”と思うこと、その他、“気づき” もあると思います。
そういうことも大事だと思いました。
わからないことが何なのか、分かったならば、そのままにしないで、考えて、考えて行動を起こして、わからないことを分かるようにする。
そうすると自分自身で解決できたりすることもあるでしょうが、そうできない場合も、いろいろな人たちで解決に向かって、進む道ができると思いました。
ドラマの中で何度か登場したセリフです。

感想 ②安堂さんの魅力
主人公の安堂さんは、ASD(自閉スペクトラム症)とADHA(注意欠如多動症)を抱えていて、そのことをカミングアウトしていない裁判官ですが、その特性があるからこそ“こだわり”の視点で事件を解決していくのが魅力です。

安堂さんは、自分は普通ではないと思っています。
子供の頃、いつもお父さんに、「なぜ普通にできないんだ」と言われていました。
ドラマの中で安堂さんは、自分は“宇宙人”だと言っていました。
裁判官になったのは、法律だけは個人の特性に関わらず変わらないルールだから、法律を学ぶことで自分も社会の一員になれると思ったからです。
人と関わることで安堂さんも変わっていくのですが、周りの人も安堂さんの影響で変えてしまいます。
そのヒューマン性も魅力です。

感想 ③弁護士の小野崎乃亜さん(鳴海唯さん)の存在感は元気をもらえます。
弁護士の小野崎さんは、安堂さんの特性を利用しようと近づいたようですが、小野崎さんがどんどん影響を受けていきます。
小野崎さんを演じている鳴海唯さんは、原作者の直島翔先生から「安堂を支えてください」というメッセージをもらいました。
この言葉を指針にドラマに取り組んでいこうとしたそうですが、逆に安堂さんにたくさん支えてもらったとインタビューで答えていました。

小野崎さんは、何が正義なのか。被告人のことを守りたい、救いたいという思いで弁護士になったのですが、刑事事件では起訴された時点で有罪がほぼ確定してしまいます。
その葛藤も少しずつ晴れてきて、東京から前橋に移動してきた時は、弁護士をやめようと思っていたのですが、安堂さんといっしょに事件を解決していく中で、やっぱりまだ続けたいと思います。

正義感が強く、部長判事の門倉さんに「裁判って誰のために、何のためにやっているんですか」とぶつけるシーンがありましたが、迫力があって、小野崎さんの存在を示したシーンでもありました。
猪突猛進のところがありますが、みんなを引っ張っていく存在でもあります。
事件に立ち向かっていく、小野崎さんの仕事への向き合い方に元気をもらえます。
また、サバサバしているところと凛とした眼差しがいいです。

私の「好きな女性リスト」に加えたいと思いました。
余談になりますが、現在、リストに載っている人は、綾瀬はるかさん、西野七瀬さん、黒島結菜さん、鈴木彩加さん(テレビ朝日記者)、です。

感想 ④”普通”とは何か
安堂さん(松山ケンイチさん)は、幼い頃、衝動性や落ち着きのなさからASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断されました。
主治医の山路先生(和久井映見さん)の助言をもとに“普通”であろうとコミュニケーションや振る舞い方を学びました。
そして、自らの特性を隠し、“普通”を装って生きてきました。
でも、ドラマを観ていると“普通”にこだわっているのは安堂さんだけではないと思いました。
安堂さんの周りの人たちも、変わり者ばかりで、個性的なのです。でも、自分の価値観や考え方を持っていても、どこかで割り切って社会に適応しようとしていました。
“普通”とは実態がありません。
普通でない状態とは、出る杭だったり、飛びぬけて目立っているような行為だったり、みんなはそんなことしないよねと言ってしまうような行為だったり。
そういう状態はよくありますし、そういう行為は、多くは“個性”や“性格”と言われます。
安堂さんの普通ではない行動は、周りの人は“個性”と思い、彼を受け入れていました。
上司の門倉さん(遠藤憲一さん)は、「特性と言えばそうなんだろうけどさ、俺は安堂くんの個性だと思っていたよ」と言う場面がありました。

価値観も考えも異なる人たちが、同じ社会で仕事をしたり、生活したり、生きていくために必要なのが「法律」なのでしょう。
小さな集まりで考えると「ルール」だったり。
そこに“普通”が存在するのだと思いました。

感想 ⑤最終回で安堂さんが法廷で語った内容
25年前の「前橋一家殺人事件」で死刑が執行された秋葉さんの再審請求。
捜査の中で防犯コンサルタントの木内という人が犯人として浮上します。
さらに調査を進めると、被害者が持っていた名刺の不動産業者の辰巳と木内は同一人物で、多和田満という人物だったことが明らかになります。
この多和田は別の事件で逮捕されるのですが、その時の指紋により、「前橋一家殺人事件」の犯人は秋葉ではなく、多和田だったことがわかるのですが、すでに秋葉の死刑は執行されていました。
真実が分かってしまいましたが、安堂さんのお父さんや一部の検察は、この事実が明るみに出れば、司法は終わると沈黙を選びました。
ですが、お父さんは、安堂さんに真実を明らかにしますと言われたこともあり、そうすることを託します。
ですが、今回も検察が出した答えは、「前橋一家殺人事件の不明指紋が見当たらない」というものでした。

安堂さんが、再審請求の決議の場で6分を超え語ります。
その内容は、このドラマのなかだけの話ではなく、現実にも通じる部分があると思える内容で、考えさせられました。
その語りの内容を記します。

<最終回、再審請求の決議の日、判事補として語った内容>

「私は、私は子供の頃からみんなと同じように普通のことができませんでした。普通は、私にとってとても難しいことでした。13歳の時、発達障害だと診断されました。普通でないのは誰のせいでもない。私の努力が足りなかったわけでもない。ホッとしました。でも同時に、なんで私が。他の誰かでなく、どうして私が。そういう思いにとらわれました。どうやって生きていけばいいのか、そのことを考えると不安で不安で仕方ありませんでした。そんな時です。『六法全書』を手に取る機会がありました。ここには社会の約束事が書かれていました。生きていくための教科書だと思いました。法律は当たり前の日常を守る約束事。私はみんなの普通を守るこの仕事に興味を持ちました。私も、社会の役に立ちたい。必要とされたい。そう願いました。ずっと自分の特性を隠して、裁判官の仕事を続けてきました。そのことで周囲に迷惑をかけています。この仕事を私は続けていいのか。辞めたくなったり、辞めたくなくなったり、迷いながら続けています。続けたいと思っています。みんなの普通を守るこの仕事が好きだからです。司法に携わる方々は、どうしてその道を志したんでしょうか。きっと一人一人に違う理由があるんじゃないでしょうか。ただ一つだけ共通の思いがあるのではないかと思います。正しいことがしたい。正しくありたい。
前橋一家殺人事件。警察は必死に捜査を行った。検察は必ず起訴に持ち込むことを期待された。裁判所も罪に対する厳正な罰を下すことに徹した。誰もが正しくあろうとした。ただ個人の思いや正義、倫理観は組織の理屈で簡単に塗りつぶされてしまいます。一人一人が正しくあろうとしても、間違えてしまうこともあります。司法が無実の人を殺した。それは同時に真犯人が野に放たれることを意味します。そしてさらなる悲劇が起こる。司法界が犯した罪。私は怖いです。怖くて怖くて仕方ありません。起きてしまった事実を前に萎縮し、思考が停止してしまいそうになります。でもだからといって、真実から目を背けていいんでしょうか。目を背けたら何が本当のことか分からなくなります。分からないことを分かっていないと、分からないことは分かりません。分からないことを分かっていないと、分からないことは分からないんです! 分からなくてはいけない! 何があったのか明らかにしないといけない。社会の約束が破られるのなら、何を信じて生きていけばいいんでしょうか。法律は揺るぎのないものでなくてはいけない。信頼を取り戻すために、信頼を失墜させる覚悟を持たないといけないと思います。起きてしまったことは変えられない。そこから始めるしかない。そこから始めるしかないんです! すみません。うまく言えません。でも今の私の心の中にある全ての言葉です」

この安堂さんの言葉を受け、裁判長・門倉さん(遠藤憲一さん)は改めて、「前橋一家殺人事件」について再審開始決定を告げます。
これに対して、検察は異議申し立ての抗告をしないと決め、真実に向き合う覚悟をしました。

感想 ⑥「再審制度改正」について
このドラマをまとめているときに、「再審制度」の改正が行われていることを知りました。
その会議で発生したできごとについてニュースになっていましたのでそのことを記しておきます。

再審制度は、重大な新証拠が見つかるなど「有罪に合理的な疑い」が生じた場合、裁判をやり直す仕組みです。ですが、現行制度では、再審開始決定が出ても検察側が「即時抗告」(不服申し立て)ができ、高裁・最高裁まで争えるため、手続きが極めて長期化します。
このことは、過去の再審例で明らかなことです。
そのことが問題であるとし、冤罪被害者の救済のため、「再審制度改正」が行われています。

4月6日、自民党法務部会・司法制度調査会の合同会議が行われました。報道陣が退出した直後、稲田朋美元政調会長が立ち上がり、強い口調で抗議したのです。
「何も1ミリもね、私たちの言い分聞かないじゃないですか、ほとんどの議員が抗告禁止と言っているにもかかわらず、それを全く無視している!」と。
ニュースでその様子を見ましたが、かなり激怒していました。
冤罪で長年苦しむ被害者の救済を迅速化するはずの改正が、党内対立で難航しているようです。

ドラマの中の再審については、抗告はしないとのことで再審開始されるのですが、そもそも裁判所が再審開始を決定しているのに、検察側が不服申し立てできるというのはおかしい制度だと思いました。

弁護士の小野崎さん(鳴海唯さん)のセリフに「裁判って誰のために、何のためにやっているんですか」というのがありましたが、裁判所が意味もなく再審開始を決定しているわけではないのですから、検察側はその決定を真摯に受け止めるべきだと思いました。

最後に:
“普通”って何だろうと思うことがあります。
私も少し変わっているかもしれません。
でも、「性格」と言えば「性格」であり、「十人十色」という言葉があるように同じ人などいないのも事実です。
そのなかでもちょっと「性格」ではすませられない状態が発生した時は、“普通”からはみ出ているのかなと思います。

ドラマのタイトルにあるテミスは、日本の最高裁判所に鎮座する女神像です。
目隠しをされたテミスは、「見えないものを見ない」。
諸説あるようですが、すべての人は、権力や立場に左右されることなく、法の下の平等を実践して、公正に裁かれるべきという司法の理念を表していると言われています。
テレビドラマを観ていると、公正に裁かれない内容がよく登場します。
ドラマにしやすいからと言えばそうですが、実際、そういう事例があるのだろうと思っています。

本当に素敵なドラマでした。

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