TVドラマが大好きな私。
7月~9月の夏ドラマを楽しく観ていますが、
火曜日、テレビ朝日 9時から「シッコウ!!~犬と私と執行官~」は、コメディータッチで、楽しく観ています。
そして、また新たな職業を知ることになりました。
それは、“執行官”という職業です。
執行官とは、
各地方裁判所に所属する裁判所の職員(国家公務員)で、裁判で出された結論が実現されない場合に、それを強制的に実現する仕事です。
そのために、財産、金品、不動産などを差し押さえたり、没収したりします。
この職業は、これまでドラマや映画に取り上げられたことがないのではないかと思います。
このドラマは、新たなリーガルエンターテイメントです。
キャストは、
主人公の女性 吉野ひかり (伊藤沙莉さん) 犬にとても好かれる性格
執行官 小原樹 (織田裕二さん) 犬が大の苦手
執行官室の事務員 栗橋祐介 (中島健人さん)
執行官補助者 砥沢譲吉(六角精児さん) 住居などの鍵を開ける鍵屋
執行官補助者 長窪桂十郎(笠松将さん) 住居内の物品を搬出する運送業
アパートの大家さん 青柳昌代(宮崎美子さん)
脚本は、大森美香さん。
原案は、小川潤平さんの「執行官物語」。
ドラマの内容は、
とある事情から執行官の世界に飛び込むことになる主人公の吉野ひかりさん(伊藤沙莉さん)が、“犬担当”の執行補助者としてさまざまな事件や人々に関わりながら、人生のリスタートに立ち会っていく姿を描くドラマです。
吉野ひかりさん(伊藤さん)は、明るくおおらかで、少々勝気。
お人好しで、とにかく犬が好きで、犬に好かれるという能力もある。
執行官の小原樹さん(織田裕二さん)は、犬が大の苦手。
二枚目というより泥臭い、不器用な人。
元裁判所書記官で、執行官に転職して1年目。それに、バツイチ。
執行官としての仕事に誇りを持ちながらも、はたから見れば強引な執行のやり方に「闇金みたい」「裁判所の犬」と罵倒されます。
吉野ひかりさん(伊藤さん)にも一話では「犯罪者」呼ばわりされます。
そのため、悩み葛藤する時もあります。
吉野さんと小原さんの掛け合いや、執行関係者たちとのやり取りは、コミカルでとても楽しいです。
ドラマの設定として必ず犬が登場します。
そして、ドラマを観ていて気持ちいいのが、織田裕二さんの演技です。
「踊る大走査線」の青島くんを思い出させてくれて楽しいです。
そのころより随分歳をとってしまいましたが、コミカルな演技も自分の仕事に悩む姿も素敵です。
執行が滞りなく終了し喜ぶ姿、夜逃げされて情けなく背中を丸める姿に味があります。
それに、なんといっても存在感があります。
第一話は、
執行官の小原さんが、アパートに住む二川さん一家の家賃滞納に関し、勝手に鍵を開けて不動産差し押さえの執行を行い、押し入れに隠れていた二川さんに1カ月後の退去を勧告します。
1カ月後の明け渡し期日。
退去していない二川さんの家にある家財道具などを次々と運び出します。
二川さん一家は、最初は抵抗していましたが、追い出されることになり、生き方を見つめ直すことになります。
主人公の吉野さんは、同じアパートの向かいの部屋の出来事だったため、その状況に立ち会うことになり、そして、執行官の世界に入ることになります。
第二話は、
人気tuberが、相方からの動産執行の申し立てにより、差し押さえの執行手続きが開始されました。
差し押さえの期日、執行官は無茶苦茶な要求に対応しながら執行を終了させます。
不動産:土地や家などの定着物で動かすことができない財産のこと
動産 :お金や家具、宝石など動かすことができる財産のこと
第三話は、
公団住宅の家賃不払いによる明け渡しと動産執行です。
判決が出てから2カ月経っても部屋を出て行く気配がなく、部屋に進入しようとしますが、玄関ドアが開かないという事態が発生。吉野さんと小原さんが、隣のベランダを伝って進入することになります。
第五話は、
クリニックの医療機器の代金未払いによる動産差し押さえです。
最後、院長からの手紙に小原さんは、今まで褒められたことはなかったと言って涙を流します。
執行官の小原さんは、誇りを持って仕事をしていますが、強引な執行のやり方を見ていた吉野さんは、そのやり方をなかなか理解できず好きになれません。
大変な仕事だと思うけど、相手が泣いたり、叫んだり、怒鳴ったりという感情がむき出しになるところを見ると、胸がザワザワすると言います。
そんな吉野さんに小原さんが次のように言います。
小原「このまま管理職になって定年を待つのではなく、生きがいを持って働きたい。
そう思っておれは執行官になった。
しかし、現実はいろいろある。歓迎されたことなんてない。
おれだってザワザワする。おれだって胸が痛い。
それでも執行しなくちゃいけないんだ。
人生に区切りをつけてもらうために。
天地は、じっとだまっていたら、いつか神様が救ってくれるなんて考えは過ちだ。
天地にはちっとも情けなんてなく、あらゆる命も公平に、わらの犬のように扱うだけ。
裁判所の判決がいつも正しいかどうか分からない。
[天地不仁、 以萬物爲芻狗](天地は仁ならず、万物を以て芻狗(すうく)と為す)
と、個人的には思ってしまうこともないわけじゃない。
が、しかしだ、留まっていてはだめなんだ。
たとえ債務者の人が納得いかなかったとしても、くぎりをつけて新たな一歩を踏み出してもらう。
リスタートしてもらう。
執行官はそのためにある仕事なんだとおれは思う。」
執行する相手は、みんな現実がよくて、現実に留まっていたくて、現実にすがっていたい。でも、未払いは発生していて、裁判所の決定に従わなくてはいけない。
自分から抜け出せない、自分は何も悪いことはしてない、一生懸命生きてきた、そういう人に、執行官が、勇気を出して一歩前に進むように背中を押すドラマです。
セリフの中に登場した
「天地不仁、 以萬物爲芻狗」
この言葉について調べてみました。
この言葉は、老子道徳経にある言葉で、
意訳すると、
天地の働きには人間が思っているような思いやりの心なんてありはしない。
天地の働きというものは、あらゆるものを区別せず、まるで藁でつくった犬の人形のように取り立てて思い入れもないように扱うものだ。
このため天地の働きと合一した聖人にも思いやりの心などというものはありはしない。
天と地が働き生み出されているこの世界は、例えるならば風の通り向ける空間のようなものだ。
何もないように見えて、実際には無限に尽きることのないエネルギーが空間に満ち溢れている。
余計な言葉や論理を使って天地の在り様に逆らえば、行き詰ってしまう。
天地の働きに任せることが大事なのだ。
(ネット: 古典超略解 より)
天地の働きとは、人間の考え出した哲理や思想で図れるものではないというのが老子の主張することだそうです。
キリスト教の神様の行いにも同様のことが言われます。
個人的な思いの中には、納得できないこともあるけれど、そこには何か意味があるのだと思って前に進みなさいということだと思います。
このドラマの最後はどのように終わるのか、今のところ全然分かりませんが、この後の数回を楽しく観たいとと思います。